はじめに
透析配管の水環境では汚れが発生します。
もし透析配管が汚れていて、患者さんの体内に入ってしまうと、敗血症などの重篤な症状が出てくるかもしれません。
今回は透析配管ではどのような汚れがあるのか解説します。
透析配管洗浄はシリーズで解説しています。
#1から順にみていくことで、もっと理解が深まりますよ!
透析配管 汚れの原因3つ
透析配管の汚れの原因は主に3つです。
- 有機物汚れ(タンパク質、脂質、バイオフィルム)
- 無機物汚れ(炭酸Caなど)
- 錆
1.有機物汚れ
有機物汚れとは、透析治療の際に排出された老廃物(タンパク質や脂質)やバイオフォルム(菌の温床源)のことです。
有機物汚れが残っていると、その汚れを栄養として生菌が繁殖します。
この有機物汚れによって菌が繁殖し、ネバネバして白い物体をバイオフィルムと言います。(上図)
バイオフィルムは増殖と繁殖を繰り返します。
2.無機物汚れ
無機物汚れとは、主に炭酸Caのことです。
この炭酸Caは透析剤の化学反応によって析出されます。
A剤の塩化Ca(CaCl2)+ B剤の炭酸水素Na(NaHCO3) = 炭酸Ca(CaCO3)
炭酸Caが回路に固着してしまうと、回路の閉塞の原因となり、何かしらのトラブルの原因となります。
オーバーホールしたときに回路に固着している白いガリガリしたやつです。
プライミングの透析液を流す排液ラインによく溜まって閉塞してしまいますよね。
あれで何度水浸しになったことやら…
また、私が経験したのだと、脱気槽の上部に炭カル(炭酸Caのことね)が固着して、回路に亀裂が入って水漏れしたことがありました。
こういったように患者さんの治療にも影響を及ぼすことがあるので、注意が必要です。
3.錆
消毒剤の次亜塩素酸ナトリウムの酸化力によって腐食(錆の発生)します。
錆の酸化鉄が菌の温床・栄養になって生菌数が増加してしまいます。
フィルターに錆が付着したり、もらい錆が起きたりします。
もらい錆とは、上流にある錆の一部が水の流れに沿って下流に流され、下流にも錆が発生してしまうことです。
もらいゲロ的な感覚です。
これら3つを完全に除去して患者さんの体内に入らないようにするために、正しい透析洗浄剤の選択が必須というわけです。
洗浄剤の選択は別の記事で解説していますが、ざっくり説明すると、
- 有機物 → 次亜塩素酸ナトリウム
- 無機物 → 酢酸・過酢酸
- 錆 → 除錆剤
を使用します。
【関連記事はコチラ】
コメント