はじめに
透析患者のDWの指標としてCTR(心胸比)があります。
今回はCTRの基礎知識や画像の見方などを解説していきます。
また、CP angleという胸水の指標となるものも説明しています。
【DWの基礎知識はコチラで解説しています】
心胸比の基礎知識
心胸(郭)比(CTR:Cardio-Thoracic Ratio)
CTRとは、胸郭の横幅に対し、心臓の横幅がどれだけあるかという比率を求めています。
これによって、心臓が大きくなっているかどうか(水が溜まっているかどうか)がわかります。
- 基準値:男性50%以下、女性55%以下(この通りではない)
- 頻度・いつ:月に一回透析前または透析後(ほとんどの病院が月に一度)
- 吸気時に撮る(胸郭が開いた状態で撮る)
心胸比の求め方は上図の通り、胸郭の幅に対して心臓の幅がどれだけあるかを%で求めます。
なので「心臓の幅 ÷ 胸郭の幅 × 100(%)」となります。
心胸比を撮るタイミングですが、透析前と後で考え方が変わります。
- 透析前の撮影:溢水じゃないかどうかの判断
- 透析後の撮影:DWが合っているかどうかの判断
なのでより正確なDWの決定、指標に用いたい場合は透析後の測定を参考にします。
CTRが大きくなる流れは以下の通りです。
体内の水分が多くなると、細胞外液量が多くなる
↓
血管内水分量が多くなる
↓
心臓が大きくなる
↓
CTRが大きくなる
なので単純に考えるとCTRとDWは以下のように調整します。
- CTRが大きい → 水が溜まっている → DWを下げる
- CTRが小さい → 水が枯渇している → DWを上げる
という指標になります。
しかしCTRは本来は数字を見るものじゃなく、画像を比較するものです。
なので個人的には男性も55%でもいいと思っています。
というか数字はほぼ見てないです。
前に撮った写真と比較して今どうなっているか、という評価が大切です。
数字はあくまでおまけなので、CTRは画像で判断するようにしてください。
また、CTRは誤差要因も大きいので、注意が必要です。
CTRを画像で見る
上図はレントゲン写真で、何がどこの位置にあるかです。
- 右第1弓:上大静脈
- 右第2弓:右心房
- 左第1弓:大動脈弓
- 左第2弓:肺動脈
- 左第3弓:左心耳(見えないことが多い)
- 左第4弓:左心室
次に正常なCTRと心拡大が起きたときのCTRです。
心拡大が起きた方では左心室が拡がって見えます。
CP angleってなに?
CP angleは胸水の評価にすごく大事です。
CP angleとは肋骨を結ぶ線(壁側胸膜)と横隔膜のなす角のことを、CP angle(costophrenic angle)という
上図の丸で囲んでいる所をCP angleと言います。
なぜCP angleを見るかというと、胸水が溜まっていないか確認するためです。
上図の3枚の写真を見てください。
真ん中の写真は正常なCP angleです。
通常は鋭角を維持しています。
一番右は胸水が少量溜まっている写真です。
胸水が溜まることでCP angleは鈍化します。
これをCP angle dullと言います。
こういった風にCP angleを見ることで、胸水の評価ができます。
胸水大量
胸水が大量に溜まっている場合は、上図のように真っ白になります。
この白い部分が胸水です。
そして胸水では気管が反対側(健側)に押されます(矢印)
これが胸水の特徴です。
ちなみに無気肺の時は、気管は患側に押されます。
立位と臥位の写り方
立位と臥位で移り方が変わってくるので注意が必要です。
- 立位 →背中から撮る → 心臓が正常に映る
- 臥位 → 前から撮る → 心臓が大きく映る
上図を見てわかるように立位では正常に映ります。
しかし臥位では心臓が近いため、レントゲンでは大きく映ってしまいます。
なので、前から撮った場合の心胸比は大きく測定されるため、あまり参考にはなりません。
前から撮る場合というのは、例えば、寝たきりの人や車いす移動で立てない人とかです。
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