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【透析】DW(ドライウェイト)の指標《hANP・BNP・NT-proBNP》

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DW(ドライウェイト)
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はじめに

hANPやBNP、NT-proBNPは透析において体液量を反映したり、心負荷を反映したりします。

そして、DWの評価にも用いられます。

今回はhANP・BNP・NT-proBNPはどういったものか、基準値などなども解説していきます。

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8分の動画で解説

hANP

hANP(human atrial natriuretic peptide):ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド☜長いけど5回口に出していったら覚える

  • 心房から出されるホルモン
  • 呼び方:ハンプ
  • 透析に採血
  • 透析患者の基準値:25100(pg/dl)

ハンプは、心房から分泌されるホルモンで、体液量の増加によって分泌されます。

心房圧による心房筋の伸展によって分泌が刺激されます。

なので、値が高値の場合は心房負荷や循環血漿量の増加を起こしている可能性があります。

つまり、体液量が多くなる → 体液量多いよーと心房からハンプが分泌されます。

あくまで目安ですが、以下のようにDWの時考えます。

  • 100以上:DWを下げる(体液量が多いから)
  • 25以下:DWを上げる(体液量が少ないから)

25~60が適正範囲や、50~100などと考える場合もありますが、個人的には上限は100でいいと思います。

注意点としては、心房細動や、弁膜症がある場合は増加します。

なので、hANPを測定した場合は心疾患もみて評価する必要があります。

透析患者さんの6割の方が、心房細動になっている、またはなる可能性があると言われています。

hANPは除水で素早く低下するので、透析後に測定します。

hANPを正確に測定するためには

hANPを最も正確に測定するためには、除水を終了してから30分後に採血をします。

この方法が最も正確にハンプを反映すると言われています。

なぜかというと、hANPホルモンは心房が伸展してから30分でピークを迎えるからです。

心房が一番伸展したところでhANPを採ります。

なので、除水終了してからすぐの採血では数値が低く出てしまい、過小評価してしまいます。

hANPは心房が伸展していると高く出ます。

BNP

BNP(brain natriuretic peptide ):脳性ナトリウム利尿ペプチド

  • 呼び方:ビーエヌピー
  • 透析前に採血(の方が意義があるか)
  • 透析患者の基準値:150~200?(pg/dl)これに関しては後で解説

BNPの基準値はかなり評価しずらいというのが本音です。

BNPは脳性と書いてありますが、心室から分泌されるホルモンで、心室の筋肉が伸展した場合に値が高くなります。

左室拡張末期圧を反映することから、心不全の診断補助として使用されています。

最初はこのホルモンが脳で見つかったので、脳性という名前になりました。

心不全の重症度マーカーに使用されます。

  • BNPが高い:DWを下げる
  • BNPが低い:DWを上げる

簡単に言えばこんな感じです。

値が150200であれば透析患者として心機能(左心機能)コントロール良好と言われます。

BNPはhANPと比較して、変化率が大きいのが特徴です。

重症の心不全ではhANPよりはるかに上昇するので、心不全の指標としてはhANPより優れています。

hANPが適正にもかかわらず、BNPが基準値よりも上昇している場合は、新たな心疾患がないか精査し、循環器で診てもらいます。

BNPの基準値の考え方

BNPの基準値は、適正なDWで、かつ心不全を認めない時点で測定した数値が各個人の基準値である

という考えに基づき、DWの指標にした方が良いのかなと私は思います。

BNPの基準値は150~200と先述しましたが、このようにうまくはいきません。

BNPの代謝経路として腎臓があります。

なので、心不全じゃなくても腎不全の影響で数値が上がってしまいます。

一般の方のBNP基準値は18.4以下で、透析患者さんは150~200なのでおよそ10倍くらいという風に基準値が考えられています。

しかし、DWが正確にはまっている人でも、BNPがかなり上昇したりもします。

NT-proBNP

NT-proBNP:N-terminal prohormone of brain natriuretic peptide(脳性利尿ペプチドのN末端ペプチド)

NT-proBNPは心筋の進展圧上昇により心室から分泌されます。

なので、心不全の診断や重症度の目安として測定されます。

NT-proBNPはBNPよりも、心不全の予知に優れていると言われています。

また、循環器診療の領域においてNT-proBNPはBNPより、鋭敏に心機能障害を認識でき、スクリーニングに汎用されつつあります。

BNPとNT-proBNPは、生成は同じBNP遺伝子に由来します。(上図)

その後、生理的に非活性のNT-proBNPと生理活性を有するBNPに分断されます。

NT-proBNPは心負荷の増大により、前駆体であるproBNPから産生され、BNPと共に血中に放出されます。

BNPとNT-proBNPの代謝は共に腎機能の影響を受けます。

BNPよりも、腎臓のみで代謝されるNT-proBNPの方がより大きく影響されます。

NT-proBNPはBNPと違い、代謝経路が腎臓のみであることから、より腎機能低下による影響が受けやすいといわれています。

つまり糸球体濾過血の低下と共に、NT-proBNPは上昇するわけです。

なので心腎関連マーカーとしても注目されています。

透析患者の基準値は6,000~8,000程度と思われます

NT-proBNPの測定値と透析患者における心血管合併症の診断指標

透析患者のNT-proBNPのカットオフ値は6,000という見方もあります※1 (上図)

また以下のように記載があります。

  • 6ヶ月でNT-proBNP値が2倍以上の上昇群はハイリスクであり、心疾患の要精査ないし加療を模索する必要がある
  • NT-proBNPの変化は全死亡、複合心血管イベント、突然死と関連する
  • NT-proBNP値が2倍以上の上昇群は、変化なし群に比べ倍のリスクがある
  • 心疾患がある方はNT-proBNPを毎月測定し、心疾患が無い方は毎季節測定してモニタリングすることが早期発見に有用である

また別の文献でも、NT-proBNPはCVD(心血管疾患)による入院予測にも有用であり、そのカットオフ値は透析前6,000 pg/mlが妥当と思われた※2

との報告があります。

別の文献では、NT-proBNPと心電図所見との関連から、NT-proBNP基準値は8,000(pg/ml)が適当とも思われる※3

との記載がありますので、参考にしてください。

※1 CKD(慢性腎臓病)患者でのNT-proBNPの有用性 -透析患者の予後改善のために-

※2 NT-proBNPは血液透析患者の心血管病による入院予測に有用である 日腎会誌 2011;53(4):633-641

※3 血液透析患者のNT-proBNP濃度測定の有用性 -心電図所見からの検討- 透析会誌43(8):633~640,2010

【NT-proBNPの詳しい記事はコチラ】

BNPとの比較

NT-proBNPとBNPの比較は以下にまとめました。

  • NT-proBNPの方が採血時の負担が軽減する
  • NT-proBNPの方が心不全の予知に優れている
  • NT-proBNPの方がより腎機能低下による影響が受けやすいといわれている

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コメント

  1. 一透析医 より:

    『hANPを最も正確に測定するためには、除水を終了してから30分後に採血をします。
    この方法が最も正確にハンプを反映すると言われています。

    なぜかというと、hANPホルモンは心房が伸展してから30分でピークを迎えるからです。
    心房が一番伸展したところでhANPを採ります。

    なので、除水終了してからすぐの採血では数値が低く出てしまい、過小評価してしまいます。
    hANPは心房が伸展していると高く出ます。』

    いつもありがとうございます。一つ教えていただきたいのですが、上記はどこか引用文献があるでしょうか?あれば教えていただきたいです。
    よろしくおねがいします。

    • Hiroto Mori より:

      コメント、閲覧ありがとうございます。
      これは講演会でドクターがおっしゃってました。
      今文献を探してみましたが、このような記載はなかったです😅
      もう少し探してみようかなと思います。

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