はじめに
透析においてドライウェイトとは、患者においてもスタッフにおいても、頭を悩ませる永遠のテーマです(;^ω^)
ドライウェイトはなぜ必要なのか?痩せたり太ったりしたとき、DWはどうするのか?など、ドライウェイトについての知識を解説していきます。
DWってなに?

DW(Dry Weight:ドライウェイト)とは直訳すると、「乾いた体重」といいますが、透析治療の際だけに使用される言葉です。
透析治療後の目標体重のことをDWといいます。
DW=「透析後体重」のことです。
透析患者は、尿が出ないので透析後から次の透析まで、食べたものや飲んだものがそのまま体重増加になります。
つまり、60kgの人が、1.0kgの食べ物を食べて、500ml水を飲んだら、61.5kgになります。
透析で除水(体の水分を取り除く)をしないと、体重がずっと増えてしまうので、何kgを目標に水を引くのか毎治療ごとに設定をしなければいけません。
DWは患者ごとに設定されており、人によって目標とする体重が変わってきます。
DWは「十人十色」ということです。
DWの定義
【DWの定義】2011年日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」より
「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義されています。
要するに、透析中に大きな血圧低下がなく、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントが少なくなる目安ということです。
透析患者の死因第一位が「心不全」であるように、透析と心臓は非常に大事な関係性があります。
なぜDWが必要なのか?
先述した通り、透析患者では尿が出ないため体重が増えてしまいます。
この状態を改善するためには、体内に貯留した水分を透析治療中に取り除く(除水)必要があります。
その時に、どのくらい除水をしたらいいのか、透析後の体重を何kgにしたら良いのか明確な基準や、目標値がないと困ってしまいます。
DWは、何kgまで除水をするのかを決定する目標値として設定されています。
DWを決めるときの指標
- 体調
- 血圧
- 浮腫
- 心胸比(CTR)
- hANP
- BNP
- NT-proBNP
- 下大静脈径(IVC径)
- 血液濃縮率(PWI)
- 血管透過性係数(Kr)
- BV計
- BIA法
DWの際に参考になる指標はこれらあります。
どれを参考にするのかは、病院によっても違います。
DWは、きつすぎても、緩すぎてもいけません。
【DWを決めるうえでの指標はコチラの記事を参考にしてください】
DWが「きつい、ゆるい」とどうなる?


これら症状が出てきます。
DWを正確に決めるのは、心臓に負担をかけないためです。
DWはきつくても、ゆるくても心臓に負担がかかってきます。
- DWがきつい → 水分を引きすぎ → 心虚血
- DWがゆるい → 水分が余っている → 溢水の可能性
DWがきついということは、「水分を引きすぎている=体重を低く設定している」ということです。
水分を引きすぎた場合、脱水状態になり、血圧が下降しやすくなります。
そして心虚血になってしまいます。
実際に、溢水で運ばれてくる患者さんが多くいますが、心虚血で運ばれてくる患者さんも結構います。
すると心臓をはじめ体全体に負担をかけることになります。
↓DWがきつい時の症状
- 心胸比が小さくなる
- 透析中の下肢つり
- 血圧低下
- 透析後の倦怠感が強い
- シャント閉塞の危険
- 声がかすれる
次にDWが緩すぎる場合です。
先ほどとは反対に「水分が余っている=体重が多めに設定されている」ということになります。
水分が過剰に余った場合、余った水分の何割かは血管に入り、心臓に負担をかけてしまいます。
すると、循環血液量の増加、溢水になってしまいます。
↓DWが緩いときの症状
- 肺に水が溜まる可能性(息苦しさ)
- 心胸比が大きくなる
- 体が重たい
- 顔や手足にむくみがある
- 血圧が高くなる
透析患者の「体が痩せる、太る」とは?
DWで大事なことは「今」の体から、余分な水分を取り除いたら何kgになるか、ということです。
「何年か前の体調のいいとき」など、「過去」はあまり参考にはなりません。
DWはいったん設定すると、ずっとそのままというわけではありません。
患者さんの状態によって再設定し、正確なDWを見直ししなければいけません。
透析患者は一般の方と同じように、痩せたり太ったりします。
ここでの瘦せる、太るというのは、筋肉量や脂肪量のことです。
栄養摂取量が減少すると、脂肪量や筋肉量が減少して体重が減少します。(=痩せたという意味)
腎機能の正常な人では、痩せても腎臓が体内の水分バランスを自動的に調節してくれます。
しかし、透析患者では自動調節はできません。
痩せた場合はDWを下げなければいけません。


痩せた場合はなぜDWを下げるのか?
痩せると水分量が多くなるからです。(上図)
筋肉量や脂肪量が減り、その減った分が水分となっています。
つまり、同じ50kgだったとしても痩せた分、余分な水分が増えているという状態になります。
患者さんからは、「痩せてしまうから体重を下げたくない」といった声があるかもしれません。
しかし、「DWを下げたから痩せてしまう」のではなく、「痩せたからDWを下げた」ということを、しっかり説明してあげてください。
DWの再設定は水分調節のため必要なことです。
反対に体が太った場合、筋肉量や脂肪量が多くなった場合は、DWを上げてあげます。
逆に太った場合は下図のような感じになります。


筋肉や脂肪がついたことによって、水分が減少しました。
このままでは脱水状態になります。
なのでDWを上げてあげます。
基本、骨・内臓は不変です。
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