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透析と心不全《透析患者の死亡原因第1位》

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合併症
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はじめに

透析と心不全は密接な関係にあって、透析患者では避けて通ることができません。

透析患者では、水分が溜まってしまうことで循環血液量が多くなって心負荷がかかります。

またそれだけでなく、異所性石灰化の影響で弁膜症を引き起こしたりもします。

今回は透析と心不全の関係を解説します。

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心不全の定義

心不全は心機能が低下し、必要な血液量を全身に送れなくなった状態のことです。

心不全の多くは心拍出量が減少してうっ血をきたすもの(低拍出量心不全、うっ血性心不全)です。

心不全は病態(症候)であり、疾患名ではありません。

透析患者さんの死亡原因の第一位が心不全です。

心不全と心筋梗塞合わせると、全体の3割にもなります。

心不全の分類

心不全の分類は以下のように3つに分けられます。

  • 進行速度による分類
  • 低下する心機能による分類
  • 症状や身体所見による分類

進行速度による分類では急性慢性に分けられます。

  • 急性:急激な心機能の低下で代償機構がカバーできない状態
  • 慢性:血行動態を長期間維持していた代償機構が破綻して、血行動態の悪化が徐々に進行する状態

低下する心機能による分類では収縮不全拡張不全に分けられます。

  • 収縮不全:流入血液量が正常でも拍出量が減少する
  • 拡張不全:流入血液量が減少し、拍出量も減少する

症状や身体所見による分類では左心不全右心不全に分けられます。

  • 左心不全:左心機能低下により、左心拍出量低下と肺うっ血をきたすもの
  • 右心不全:右心機能低下により、右心拍出量低下と体静脈うっ血をきたすもの

収縮不全と拡張不全

上図は正常な収縮と拡張です。

まず、拡張期では心房から心室に血液が流入してきて心室がひらきます。

そして収縮期では、入った血液を押し出します。

この時の収縮できる能力、拡張できる能力を収縮能、拡張能といいます。

心室は拡張期の流入した血液量(拡張終期容積に反映される)を収縮期に1回拍出量として駆出します。

この時の駆出率はEFといい、以下の式で表します。

EF=一回拍出量/拡張末期容積

収縮不全では左室駆出率(EF)は低下します。

収縮能が低下すると、収縮力が弱いため、流入血液が正常でも、拍出量が減少します。

それを補うための代償機構として、拡張終期容積を増加させ、一回拍出量を正常に保ちます。

一方拡張能が低下すると、心室が伸展しにくい(弛緩しにくい、心筋が硬い)ため、流入血液量が減少し、拍出量も減少します。

それの代償機構として、正常な拡張終期容積まで伸展させ(無理やり拡げて)、1回拍出量を保ちます。

  • 収縮不全:HFrEF(ヘフレフ)
  • 拡張不全:HFpEF(ヘフペフ)

左心不全と右心不左

  • 左心不全:左心の機能低下により、左心拍出量低下と肺うっ血をきたす
  • 右心不全:右心の機能低下により、右心拍出量低下と体静脈うっ血をきたす

左心不全では左心拍出量が低下することで、左房圧が上がります。

すると肺循環に血液が滞ってしまうので、肺静脈圧が上がり、肺うっ血→肺高血圧をきたします。

右心不全では右心拍出量が低下することで、右心房が上がります。

すると中心静脈圧(下大静脈や上大静脈)も上がります。

つまり、全身の静脈圧が上がり、体静脈うっ血をきたします。

心不全の内容

死因の第一位である心不全も、その内容は多彩です。

心機能低下の原因は以下の通りです。

  • 心肥大
  • 心筋虚血
  • 心タンポナーデ
  • 弁膜症
  • 収縮性心膜炎 など

これらの具体的な要因は「溢水」「貧血」「高カリウム血症」「心弁膜石灰化」などが関与しています。

透析患者はなぜ心不全になりやすい?

透析患者が心不全になりやすい原因は以下の通りです。

  • 水分・塩分の過剰摂取
  • 高血圧の持続
  • 異所性石灰化(リン・カルシウム)
  • 貧血
  • 糖尿病や喫煙による動脈硬化

透析患者さんは、慢性腎不全の病態にあるので尿が出ません。

すると、水分や塩分を体外に排出することができす、循環血液量が増え、心臓に大きな負担となってしまいます。

心臓は頑張って拍出を続けますが、やがて疲れて心機能が低下し、心不全に至ります。

透析患者さんは透析に至る背景として、高血圧や糖尿病などの既往があります。

高血圧が長期にわたり続くと、心肥大を起こし、心臓への負担が増します。

また、リンとカルシウムが結合して異所性石灰化を引き起こし、動脈硬化が進みやすい状態にあります。

動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳血管系の病気を引き起こします。

透析導入後でも、「高血圧」「狭心症」「不整脈」を引き起こします。

心不全の予防

やはり、第一に考えるのは「水分・塩分を控える」ことです。

水分・塩分の過剰摂取で循環血液量が増え、溢水状態になります。

透析間での増えに注意しましょう!

中1日では「3%」の増え、中2日では「4~6%」の増えを守るようにしましょう。

例えば、50kgの人では中1日は「1.5kg」まで、中2日では「2.0~3.0kg」の増えまでとしましょう。

これらを超えるようでしたら、水分・塩分の摂りすぎかもしれません。


また、処方された薬を確実に飲んでください。

高血圧の薬や、リンを下げる薬(高リンは異所性石灰化につながる)は、確実に飲んでください。

処方薬の確実な服用は、心不全のリスクを下げます。

また、十分な透析を行うことも大切です。

透析効率が悪く十分な透析が行えていないと、尿毒症性の心筋障害を生じる危険性があります。

呼吸困難の憎悪

透析患者では中2日の夜間に呼吸困難を訴えることが多いです。

中2日の水分が溜まる

静脈還流量アップ

肺うっ血憎悪

呼吸困難憎悪

につながってしまいます。

また就寝中では以下のような状態になり、呼吸困難が悪化します。

  • 仰臥位による静脈還流量の増加
  • 交感神経刺激の減少による心機能抑制
  • 呼吸中枢抑制

だから夜中に運ばれる人が多いんですね。

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