はじめに
まずはじめに、穿刺というのは針を刺す行為だけが穿刺ではありません。
針を刺すまでに患者さんとの信頼関係の構築が、かなり重要となってきます。
ではよく聞く信頼関係とはどういう意味なのか?それを語っていきましょう!(個人的な意見も多々あります)
【患者】透析が嫌な理由 第1位 穿刺
まず患者さんは透析が非常に辛いです。スタッフはこの気持ちを理解しましょう。
患者さんに透析治療の何が辛いですか?と聞いた全国アンケートでは、1位が穿刺でした。ちなみに2位は透析時間4時間という拘束時間でした。
透析患者さんは1年間で約300回針を刺します。(僕らは年に1、2回の予防接種くらいだぜ…)
2本/日 → 6本/週 → 26本(13回なので)/月 → 約300本/年
ミスが多い場合はそれ以上に。
穿刺は痛い、失敗したらもっと痛い、これを1週間に3回乗り越えないといけない!そりゃあ透析が嫌になりますよねぇ。
また死ぬまで終わりの見えない治療に常に不安があります。
こういった患者さんの苦痛を理解することが大切です。
その他にも、なぜ患者さんは透析が嫌なのか
- 週3回病院に行かないと…(1年で155回治療のために足を運ぶ)
- 4時間ベッドで寝てたら腰や関節が痛む(腕曲げたいなぁ)
- 毎回透析中に血圧が下がって吐き気する、嘔吐しちゃう(気持ち悪い。処理してくださるスタッフにも申し訳ないなぁ)
- 透析後も体がしんどい(家事しないと、ご飯作らないと)
- あのスタッフ嫌だなぁ(うわぁ、穿刺きたよ…なんか気まずい空間…)
などなどいろんなことが原因で透析が嫌というのはありますけど、ほとんどの患者さんは穿刺がとても嫌です。
なので穿刺時の痛みや、穿刺行為の質が患者さんに大きな影響を与えます。
患者さんはこういった苦しみがあるんだということを頭の片隅に置いていれば、穿刺に対する考えや患者さんへの見方も変わってくるかもしれないです。
スタッフも穿刺がストレスに!?
スタッフも穿刺に関してはナイーブになります😢
穿刺によるストレスが原因で透析室から異動したいです。なんて人もザラにいます。
そのくらい穿刺はスタッフにとっても、メンタル面で影響を受けます。
穿刺のどういったことがストレスになるのか
- 失敗したらどうしよう(これ一番多い)
- 手が震える(最初は緊張するよね)
- 苦手な患者さんだ…(怒られたらどうしよう)
- この前失敗した患者さんだな…(また失敗したらもう後がないぞ…)
こういったネガティブな考えから穿刺がストレスになり、透析業務から離れたいっていう方もいます。
なのでこういった穿刺の難しいところもうまく付き合って、メンタル面を良好に保つことが大切です。
患者さんとの信頼関係
穿刺に挑むにあたっては患者さんとの信頼関係がすごく大事です。
「穿刺=信頼関係」この言葉良く出てきますよね。具体的にどういったことかというのを説明します。
穿刺は結局、患者さんが「この人なら私の血管刺してもいいか」って思ってくれるかどうかです。
痛みを伴うもの、皮膚を傷つけて傷跡ができるものに対して、信頼ができない人にしてもらいたくないですよね。
なので穿刺をするためには、この人信頼できるなって患者さんに思ってもらえるような関係を構築することが大事です。
アピールするって言ったら変なんですけど、患者さんと積極的にコミュニケーションをとっていき、ある程度の信頼と安心をもってもらうことが大事となってきます。
信頼関係を構築していれば、穿刺するために患者さんの許可を頂くという段階はほぼクリアしているようなものです。
また穿刺が始まり少し失敗しても大目に見てくれますし、許してくれます。
コミュニケーションのとり方
では、どういう風にコミュニケーションをとっていくか。
まずは日常会話を楽しむってことですね。
配属されたばかりだと患者さんと深くかかわることもないので、その日あったニュースとかを話してコミュニケーションを図っていくのが最初は無難だと思います。
そこから仲が深まっていくと、ご家族のこととか、自身の体調のこととかいろんなジャンルの話へと幅を広げていきます。
特にお年寄りの方はお孫さんの話めちゃめちゃ楽しそうに話します!よっぽどかわいいんでしょうねぇ。
基本は聞き手に回って、話はさえぎることなく最後まで聞くとすごく好感がいいですよ。
割合としては聞く6、話す4くらいがいいんじゃないかなぁと思います。
注意点としては、仲があまり深まっていないのに突っ込んだ話をしてしまったり、友達のような態度で話をしてしまったりすることです。
ここの距離感を誤ると、患者さんから生意気だなぁとか、距離感が近いなぁと思われるので、いい塩梅で話しかけましょう。
その他にも注意する点は以下のようなことがあります。
- 明るく接する(暗いと話しずらい)
- 聞き手に回る(話しやすいなぁって思ってくれる)
- 相手の意見を否定しない(肯定して受け入れてあげる)
- 前回話した内容を覚えておく(興味を持つ)
- 最初は敬語で(人生の先輩です、敬った態度で)
- かたくなりすぎない(少し隙があった方が相手は話しやすい)
と細かく言えばこれ以上あるんですけども、常に人と関わる練習をしておいた方がいいです。
また対人関係というのは、上司から教わるものでもありますが、その人の天性の部分(才能みたいなもん?生まれつきというか、今までの人付き合いというか)もあります。
患者さんへの感謝を忘れない
私は、新人さんが穿刺デビュー!となったら必ず聞くことがあります。
それは「穿刺にとって一番大事なことって何だと思う?」
大体の人が技術とか針がどうとか、答えるんですけども、もちろんそれも大事です。穿刺を1回で決めるというのは大事なことです。
しかし、まず一番大事なことは患者さんへの感謝を忘れないことです。
なぜかというと、患者さんは新人さんが穿刺来ると当然怖いです。成功するかなぁとか、新人さんと同じくらいドキドキすると思います。
できれば新人さんに刺してもらいたくなっていう人は(患者さんが言わないだけで)かなりいると思います。
しかし、ほとんどの人は、刺していいよーって快く言ってくれます。
心が鬼広くないですか?
新人さんじゃなかったら確実に入るし、痛くもないし、透析始まる前にこんなに怯えなくてもいいのに。
それにも関わらず、新人さんの穿刺が1人前に育つように、大事なシャントを差し出してくださっている患者さんのその気持ちに僕らは感謝しないといけません。
たまに新人さんでこんな人がいます。
穿刺全然怖くないっすよ。余裕っすよ。(ただの強がりかもしれないけど)
あぁこいつは患者さんの気持ちが分かっていないからこういうこと言えるんだって私は思います。
もし患者さん側に立って気持ちを理解してたら、こんな発言は絶対しないはず
なので新人さんに、穿刺どう?緊張する?って聞いたときに、緊張します、失敗したらどうしよう。って答える人が普通ですし、私はそっちの方が安心します。
なので、患者さんの気持ちに立つ、そして患者さんの気持ちに感謝するっていうことをまずは心がけてくださいね😊
穿刺に対する自覚
スタッフは穿刺に対する自覚を持つことが重要です。
患者さんに針を刺すことが、医療行為だから許されているっていう考えを持つことですね。
これがどういうことかを説明する前に、私が2年目の時先輩から言われた一言で胸に刻まれている言葉があります。
穿刺は医療行為で資格があるから許されることであって、一般の人がしたら傷害事件になるからね。
先輩の一言
つまり、ぼくらは医療という壁に守られて穿刺してるけど、それは普通ではないってこと
だから自覚をもって穿刺しろよ。というのを言われました。
その時は大袈裟だなぁと思ってましたが、数年後この言葉の深みに気付きました。
もし自覚を持ってたら、穿刺に対して真摯に向き合うし、失敗したら納得いくまで原因を追究して次に活かさないとって気持ちに自然になります。
穿刺に対する自覚を持つってことはこういうことだと思います。
まとめ
いろいろ語ってしまいましたけど、大事なことは、
- 透析治療は大変なんだという考えを念頭に置く
- 穿刺って辛い
- 穿刺は信頼関係が大切
- 穿刺への自覚をもつ
- 自分が患者さんだったらと考える
技術どうこうよりもまずは気持ちを整理して穿刺に臨むことができたら最高ですね。
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