はじめに
腹膜透析患者さんは、腹膜を介して除水や老廃物の除去、物質交換を行っています。
何らかの影響で腹膜に炎症が起こる、腹膜炎になってしまいます。
今回は腹膜炎とは何か?説明していきます。
腹膜炎ってなに?
腹膜炎とは、カテーテルの不潔操作等により菌が腹腔に入り、腹膜が炎症を起こす状態です
日本の腹膜炎の発症率は、0.21~0.24回/患者・年 と、低い頻度を維持しています。
腹膜炎発症率は、1人の患者が1年間に何回腹膜炎に罹患したかを示す「回数/患者・年」で表記されます。
腹膜透析関連感染症
腹膜炎は「腹膜透析関連感染症」に分類されます。
腹膜透析関連感染症の中に、腹膜炎とカテーテル出口部・トンネル感染があります。
カテーテル出口部・トンネル感染が発展して、腹膜炎を発症することもあります。
腹膜炎になったらどうなる?
腹膜炎になると、以下のようなリスクにつながります。
- 除水能力の低下
- 腹膜機能の低下
- カテーテル抜去
- HDへの移行
- EPSへの進展
- 死亡の原因
腹膜炎を予防し、早期治癒させることで、腹膜の機能を温存します。
腹膜炎を予防がPD継続につなげる重要なポイントになります。
腹膜炎の分類
腹膜炎は「感染性」と「無菌性」に分かれます。
赤字で書いているグラム陽性菌感染が多いです。
- 感染性 → 腹膜へ障害を与え、離脱の大きな要因になる
- 無菌性 → カテ等に関連したアレルギーによるものと考えられ、多くはPD導入初期に認められる
無菌性は自然治癒することが多いです。
原因
感染性腹膜炎の原因は「外因性」と「内因性」に分けられます。
【外因性】
- 経カテーテル感染:接触汚染などにより菌がカテーテル内を通り、直接腹腔内に侵入する
- 傍カテーテル感染:菌がカテと皮下組織などの間を経て、腹腔内に侵入する
- カテ挿入時のカテーテル感染
【内因性】
- 経腸管感染:胆のう炎、虫垂炎、憩室炎、腸管壁の穿孔などから感染する
- 血行性感染:結核や歯科疾患などにより血行性に菌が波及する
- 経膣感染:膣内に感染があると、腹腔に開いている卵管采から波及することがある
- その他:腹腔内腫瘍など
診断
次のうち少なくとも2つを満たす場合に診断します。
- 腹痛あるいは透析液排液混濁がある
- 排液中の白血球数が100個/μL以上で好中球が50%以上
- グラム染色や培養による起炎菌の検出
3.の起炎菌は、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌、MRSA、表皮ブドウ球菌)が多いです。
腹膜炎を繰り返すと腹膜機能が低下し、腹膜透析を中断することもあるので、注意が必要です。
腹膜炎の3主徴
- 腹痛(80%)
- 発熱(30%)
- 排液混濁(80%)
この3つが腹膜炎の3主徴です。
重要なので必ず覚えておきましょう!
悪心、嘔吐、下痢を伴うこともあります。
腹膜炎ではお腹が固く張ることもあるので、これも特徴の一つです。
排液の性状確認
排液の性状確認をすることも大切です。
バッグ交換時には必ず毎回、排液の性状確認を行うことが大切です。
また、腹膜炎や異常の早期発見に努め、性状確認は排液確認ボード等で確認します。
- 排液混濁:腹膜炎を起こしている可能性があるため、排液を病院へ持参してもらい、検査する
- フィブリン混入:炎症性物質でカテーテルの刺激などで出現することもある。多量に継続した場合、腹膜炎を起こしていることもある
- 血性排液:腹腔内へ何らかの原因で出血が起きている状態。腹部殴打や排卵・月経周期の影響、内臓疾患の可能性もある
腹膜炎の治療
混濁がなくなるまで洗浄(フィブリン析出時はヘパリンを添加)し、抗菌剤をエンピリックセラピー(経験的投与)により投与します。
難治例や、真菌や結核菌が起因菌の場合にはカテーテルを抜去します。
難治例とは、適切な抗菌薬を投与しているにも関わらず、5日間経過した後でも排液の混濁が消失しない場合
腹膜炎治療のポイントは以下の2点です。
- 抗菌薬治療は検体採取後、できるだけ早く投与する(重症化を軽減させるため)
- 抗菌薬の投与は静脈内投与(IV)よりも、腹腔内投与(IP)が勧められている(理由は腹腔内濃度が高くなるため)
「排液の混濁状態」や「フィブリン混入」「カテーテル出口部・トンネル感染」「診察」などは、コチラで画像を用いて、詳しく解説しています。
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