はじめに
腹膜透析は、血液透析の前に導入することによって、活動の自由度を高めたり、社会復帰しやすくします。
PDファーストという言葉があるように、近年では腹膜透析の認知を高めていく動きがあります。
しかし誰にでも腹膜透析が導入できるわけではなく、適応になる人とそうじゃない人に分かれます。
今回は適応を「向いている」「相対的禁忌」「絶対的禁忌」に分けて説明していきます。
向いている人
腹膜透析には以下のような人が向いています。
- 積極的な社会復帰を希望の方(仕事や趣味を楽しみたい)
- 心機能低下や低血圧などによりHDが実施できない方
- シャント作成が困難な方
- 小児
- 脳圧亢進症の方(HDでは脳圧が亢進しやすい)
- 透析施設が遠かったり、仕事上週3回の通院が不可能な方
- 出血性の要因が強く、抗凝固剤にヘパリンを使えない方
腹膜透析の一番の利点は、社会復帰に優位なところです。
PDにおいて社会復帰は大事なキーワードになります。
PDでは病院に通うのは月1~2回程度です。
なので時間的拘束もあまりなく(日々の透析液の交換は時間的拘束があります)、HDよりも社会復帰しやすい利点があります。
相対的禁忌
相対的禁忌は、以下のような特徴の人です。
相対的禁忌とは「原則実施は不適当だが、メリットがデメリット(リスク)を上回る場合は例外的に腹膜透析が可能になる」という意味です。
- 認知症や視力障害で自分で操作できない人
- 性格がルーズであったり、理解力に乏しい
- 肝硬変を合併している
- 重篤な栄養障害がある(蛋白質やアミノ酸の漏出により衰弱してしまう)
- 下肢の閉塞性動脈硬化症がある(悪化する可能性がある)
- 高脂血症がある(糖の負荷により中性脂肪が増加する)
- ヘルニア(鼠径、臍)がある(程度によっては手術で修復する必要がある)
最初の2つの「認知症や視力障害で自分で操作できない人」「性格がルーズであったり、理解力に乏しい」は、凄く重要なポイントになります。
PDは自分で透析液を交換するので、自己管理が雑な人は、向いていません。
現在の考え方は、自分でできない人に関しては、訪問看護などを入れてでもPDをするという方向にシフトしつつあります。
今盛んに言われているのはおうちでPDという考え方です。
- 認知症
- 自分でできない人
- 一人暮らしで手伝ってくれる人がいない
といった人に、訪問看護を入れて実施していく方法です。
とは言っても自分でできない人には薦めにくいので、今後どうなるか注目したいことろです。
腹水を伴った肝硬変合併腎不全例に対して、腹膜透析を行い、生活向上を含め、その有効性が指摘されているといった文献もあります
透析会誌43(1):93~98,2010 腹水を伴う肝硬変合併腎不全に腹膜透析を導入した2例 –日本における報告例のまとめ-
肝硬変患者に対してPDを実施する利点としては、循環動態や電解質、浸透圧の急激な変化がないこと。
容易な腹水除去と、低栄養に対する糖分の補充があるというところです。
しかしリスクとしては、CAPDには排液への蛋白喪失性の低栄養、腹膜炎併発の危険性があるというところです。
肝硬変の患者に対してもPDをお勧めするのかどうかは、メリットとリスクもあります。
絶対的禁忌
絶対的禁忌は例えば…
- 手術や炎症による高度な腹膜癒着で、腹腔内の容積が減少していると考えられる場合
→ ただし手術をした患者さんでも多くの場合は腹膜透析が可能です。手術癒着が予想される場合は前もって腹膜鏡下の手術をするのも1つの手です。
腸閉塞で幾度となく手術しており、腹膜が癒着している患者さんはいます。
- 腹腔容積が増えると胸腔が圧迫され、呼吸や換気障害が高度に障害されると考えられる場合
→ 高度の慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)
その他にも…
- 横隔膜欠損がある(胸水で低酸素血症になる)
- 高度の腰痛症がある(透析液の貯留によって腰痛が悪化する)
- 人工肛門(感染面)
- 精神障害者、知的障害者(介助により可能な場合もある)
- 憩室炎の既往がある(しかし無症状であれば実施可能)
人工肛門とカテーテルの出口部が近い場合、清潔に保てないことがあります。
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