はじめに
腹膜透析には、良い面と悪い面の両方が存在します。
今回は腹膜透析のメリット、デメリットを説明します。
個人的には良い面が多く、PDファーストを推奨しております。
PDの利点と特徴
- 社会復帰を容易にし、生活行動範囲が広がる
- 循環器系に与える影響(血圧変動)が少ない
- 残存する腎臓の働きが保持されやすい
- 食事、水分の制限が比較的穏やか(特にカリウム)
- シャント不要で穿刺の苦痛がない
- 通院、透析時間に縛られない生活ができる
- 透析による疲労感が少ない
- 透析中の血圧低下がない
- 血液中の成分濃度が安定しており、体液の恒常性が保たれる
PDの利点と特徴には以上のことがあります。
1つずつ、簡単にですが説明していきます。
【1. 社会復帰を容易にし、生活行動範囲が広がる】
通院回数や拘束時間も少ないため、生活行動範囲が広がります。
【2. 循環器系に与える影響(血圧変動)が少ない】
シャントを作成していないので、心負荷がかかることはありません。
【3. 残存する腎臓の働きが保持されやすい】
HDに比べ除水が緩やかで腎血流量の急激な低下が起こらないため、腎機能が保たれやすいです。
尿が出る期間も長くなります。
【4. 食事、水分の制限が比較的穏やか(特にカリウム)】
HDと比べると、比較的緩やかな傾向にあります。
腹膜透析液にはKが含まれていません。なので毎日少しずつ除去されます。
【5. シャント不要で穿刺の苦痛がない】
血液透析で患者が苦痛になるのが「穿刺」です。
それが無いのが腹膜透析です。
腹膜透析は腹膜にカテが埋め込まれているので、透析をする際はコネクタを接続するだけです。
【6. 通院、透析時間に縛られない生活ができる】
腹膜透析患者の通院は月1~2回です。
【7. 透析による疲労感が少ない】
1日かけてゆっくり除水をするので、疲労感は少ないです。
【8. 透析中の血圧低下がない】
1日かけてゆっくり除水をするので、血圧低下はありません。
【9. 血液中の成分濃度が安定しており、体液の恒常性が保たれる】
1日かけてゆっくり物質の除去をするので、体液の恒常性は保たれやすいです。
これらの中から特に重要なのは、最初の3つです。
- 社会復帰が容易
- 循環器系に与える影響が少ない
- 残存する腎臓の働きが保持されやすい
この3つが、腹膜透析の最大の特徴3つです。
デメリット【医学的な観点】
- HDに比べ溶質除去効率が悪い
- 腹膜炎・出口部感染などの感染症の合併
- 腹圧上昇に伴うヘルニアの合併
- 透析液の重量負荷による腰痛の合併
- 蛋白質・アミノ酸喪失に伴う低蛋白血症の合併
- 透析液からの糖質吸収に伴う血糖や脂質の管理が必要な場合がある
- 生体膜である腹膜の劣化
腹膜透析は溶質除去の観点から、PD+HDの併用が必須と考えます。
腹膜透析だけでも不十分ではないですが、HDを併用することで満足のいく除去量を目指すことができます。
また、感染が起きないように自己管理が非常に重要になります。
感染が起き、腹膜炎になってしまうと腹膜透析の寿命を下げてしまいます。
腹膜の劣化によってPDの寿命は8年程度です。
どんなに厳格な管理をしていても、毎日24時間腹膜を使用しているので、腹膜劣化を起こしてしまいます。
腹膜が寿命を迎えると、HDに切り替わります。
デメリット【日常生活】
- 日々のバッグ交換の煩わしさ
- バッグ交換や出口部ケアの衛生手技が必要
- バッグ交換の際に隔離された交換スペースが必要
- 透析液の保管スペースが必要
- 視力障害や肢体不自由のある患者は自己管理が困難
- 要介護患者における家族の介護・介助負担の増加
日常生活においてはとにかく清潔に、そして自己管理が非常に重要となってきます。
スペースの確保や介護者の必要性など、身の回りの環境が重要になります。
最後に、メリット・デメリットありますが、HDをする前にPDをしておくことは、非常に重要です。
なぜかというと、患者さんの自己管理意識を植え付けることができるからです。
PDは自己管理が凄く大事ですが、HDも大事になってきます。
PDからHDに移行しても、患者さんは自分の体に関心を持つことができます。
つまり、シャント管理や、水分コントロールなどを意識づけて守れるようになります。
なのでHDをする前にPDをしておくことは、非常に重要です。
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