はじめに
透析効率はKt/Vで表します。
そしてKt/Vにも種類があり、「Kt/Vsp」と「Kt/Ve」があります。
今回はKt/Veに焦点を当て解説していきます。
私も100%理解しているわけではありませんので、理解しにくいところがありましたら申し訳ないです。
「Kt/Vsp」ってなに?
まず、Kt/Veを理解する前に、Kt/Vspを学習しておきましょう。
Kt/Vspは、BUNが体液全体に均等に存在し、自由に移動できるという前提のモデルです。
体液全体を1区画とみなすモデルで、1コンパートメントモデルともいわれます。(コンパートメントは後で解説)
体液は3つの区画に分かれます。
「細胞内液」「間質液」「血漿」です。
そして、細胞内液と間質液との間に「細胞膜」があり、間質液と血漿との間に「毛細血管壁」があります。
Kt/Vspはこの3つの区画をひとまとめにして、物質を除去するといった考え方です。
体液全体を1つのプール(sp:single-pool)としたモデルで、ガイドラインはspを用いることを推奨しています。
「Kt/Ve」ってなに?
Kt/Veは細胞膜や毛細血管壁が抵抗になり、自由に移動できないことを考慮したモデルです
透析後の尿素濃度にリバウンドが認められることを考慮して、体液を二区画とみなすモデルです。
equilibrated
間質液と血漿は細胞外液に存在します。
Kt/Veは「細胞内液」と「細胞外液」の二区画に分類されます。
Kt/Veを箇条書きにすると…
- e:equilibrated(イクイリブレイテッド) → 平衡させる、釣り合わせる
- Kt/VeはDouble-poolモデルとも言われる
- 透析後の尿素濃度のリバウンドを考慮している
BUNは実際は、細胞膜や毛細血管壁が抵抗になり自由には移動できません(時間がかかる)。
これを考慮したモデルです。
VAや心肺の再循環(心肺とダイアライザ間には必然的に5%程度の血液の再循環が生じている)などによる尿素のリバウンド現象の影響を補正して、体内の尿素が平衡状態となった時点の尿素濃度を推定して求めます。
「Kt/Ve」は「Kt/Vsp」より0.2ほど低くなるといった特徴をもっています。
Kt/Veのリバウンド現象 ~局所血流モデル~
Kt/Veを理解するには局所血流モデルやリバウンド現象を理解する必要があります。
局所血流モデルとは、生体は高血流臓器と低血流臓器からなるという観察結果に基づく尿素動態モデルのこと
高血流臓器と低血流臓器とは何か?
- 高血流臓器:水分含有量は少ないが、血流が多い臓器(心臓、脳、消化器系臓器、肺など)
- 低血流臓器:水分含有量は多いが、血流が少ない臓器(筋肉、骨、皮膚、脂肪組織など)
そして高血流臓器は心拍出量の85%、体液量の20%が通っています。
低血流臓器は心拍出量の15%、体液量の80%が通っています。
そして、高血流臓器と低血流臓器が透析されるとどうなるか?
- 高血流臓器:少量の体液に分布する尿素を大量の血流が洗い流していくので、尿素濃度は透析の進行に伴い大きく低下する
- 低血流臓器:大量の体液に分布する尿素を少量の血流が洗い流すので、透析の進行に伴う尿素濃度の低下はさほど大きなものとはならない
といった特徴をもちます。
したがって、透析終了時は高血流臓器と低血流臓器との間に著明な尿素濃度の差が生じます。
そして透析が終了し、尿素の除去が停止すると高血流臓器と低血流臓器の尿素濃度は均一になっていきます。
この透析終了時から、透析終了して高血流臓器と低血流臓器の尿素濃度が均一になる過程をリバウンド現象といいます。
リバウンド現象とは透析後数十分で血中のBUNが上昇することをいいます(濃度を均一にしようとする過程で見られる)。
透析終了時における高血流臓器と低血流臓器との間の尿素濃度差は、尿素を急速に除去するほど大きくなります。
つまり透析終了後の血清尿素濃度のリバウンドは「高効率・短時間透析>低効率・長時間透析」となります。
透析終了後、高血流臓器と低血流臓器の尿素濃度が均一になるのには約40分が必要です。
それにも関わらず、透析後の採血は透析終了時に行わざるをえません。
つまり、高効率・短時間の透析を施行している国や地域のKt/Vは、より高く評価されるということになります。
この問題を解決するために、Daugirdasらは、透析終了時の血清尿素濃度の代わりに透析後でリバウンド後の血清尿素濃度を使用しました。
そして除水にともなって体液量が減少していくsingle-poolモデルを解析することにより、Kt/Vを算出しました。
これによって算出されたKt/VをKt/Veといいます。
Kt/Veは体内における「尿素の除去されやすい区域」と「除去されにくい区域」の境界に存在するはずの、尿素の移動抵抗となるバリアの影響を消去した上で求めたモデルとなります。
リバウンド後の血清尿素濃度については、局所血流モデルを解析することにより求めています。
これがKt/Veです。
図やイラストでイメージしたいという方はコチラで学習してみてください。
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