はじめに
透析効率とはKt/Vとも言い、体液全体がどのくらいきれいになったかを表す指標として用いられています。
Kt/Vは臨床現場でもよく用いられています。
今回はこの透析効率(Kt/V)の基礎知識を超わかりやすく解説していきます。
透析効率ってなに?
透析効率とは、体液全体がどのくらい透析されたかを表す指標です
透析効率は、透析前後でどのくらいの老廃物が除去されたかを表す指標として使用されます。
この老廃物はBUNを用います。
Kt/Vは小分子除去の簡便な指標です。
明らかな透析不足が無いかを調べる簡易的なツールと考えてください。
つまり、Kt/Vの数値がいいから、OK!ということではありません。
今の透析はβ2-MGやα1-MGがターゲットです。
Kt/Vのみで透析が十分であるかどうかを議論する事はできません。
基礎知識を以下に箇条書きで示します。
- 透析効率の指標はKt/Vspを用いることを推奨している
- 透析効率はKt/Vで表す
- 「ケイティーパーブイ」や「ケイティーオーバーブイ」と呼ぶ
- 透析効率=透析量
- 最低確保すべきは Kt/Vsp:1.2を推奨
- 目標透析量 Kt/Vsp:1.4以上が望ましい
個人的にはKt/Vは1.5以上あれば良しっていう感覚です。
参考:日本透析医学会雑誌 46 巻 7 号 2013 第1章 血液透析量(小分子物質)と透析時間
透析の考え方
透析治療の考え方は「毒素を含む体液」を透析することによって、毒素を排除し「毒素を含まないきれいな体液」に変えることです。
すごく簡単に言うと「毒素なし体液」を多く作ることが「たくさん透析した」ということになります。
Kt/Vの意味
Kt/Vは、1回の透析で作られた「毒素のない体液の総量」から体液総量を割った値のことです
これによってKt/Vは、透析で総体液量の何回分をきれいにしたかを表しています。
Kt/Vの用語の意味は以下の通りです。
- K(クリアランス):一定時間に作られた毒素のない体液量(mL/min)
- t(time):透析時間(min)
- V(Volume):体液総量(mL)
つまり、K×t=1回の透析で作られた毒素を含まない体液の総量ということになります。
そしてK(クリアランス)の、毒素のない体液量のことをクリアスペースといいます。
Kt/Vでは体液全体がどれほど透析されたかが分かります。
参考:透析の量について考える 特集 血液透析患者の透析量(Kt/V)とは?KtV.pdf (aijinkyo.com)
クリアスペースの考え方
クリアスペースの考え方を部屋の掃除に例えると…
- 掃除機をかける = 透析をする
- ごみで汚れた床面 = 尿毒素で汚れた体液
- ゴミが0な床面積 = 尿毒素を含まないきれいな体液
ということになり、ゴミが0な床面積が透析におけるクリアスペースになります。
Kt/Vの考え方として、上図から以下のように考えることができます。
- 「透析で作られたきれいな体液の総量」と「体液量」との比がKt/V
- 「掃除機をかけた床面積」と「部屋全体の床面積」との比がKt/V
なぜV(体液総量)で割るのか?
なぜV(体液総量)で割る必要があるの?
体が小さくても大きくても等しく評価するため!
たとえば細い人の除去量100と太い人の除去量100は、そもそもの体液量が違います。
なので老廃物除去が同じでも、体重によって評価が変わってきます。
Kt/Vを用いて、体液量で割ることで等しい評価を出すことが必要です。
なぜ指標にBUNを用いる?
結論から言うと、BUNは数字的に出しやすいからです。
透析の適正さを評価する際に用いる指標物質は、以下のような条件が必要です。
- 腎不全で蓄積する
- 透析で除去される
- 毒性がある
- その体内動態が、他の尿毒症性物質を代表する
- その濃度が臨床的な転帰と関連する
- 測定が簡便である
BUNは細胞膜をほぼ自由に通過して拡散する性質があり、体液に一様に分布すると仮定できます。
つまり数学的な動態モデルに適合するという特徴を持ちます。※)
※)Barth RH. Urea modeling and Kt/V:a critical appraisal. Kidney Int 1993;43(Suppl 41):S252−60.
Kt/V=1.0とは?
Kt/V=1.0とは体液が1回透析された、ということです
Kt/V=1.0というのは全身の血液ではなく、体液が1回透析されているという考え方です。
なぜかというと…
毒度が除去され血液がきれいになる
↓
濃度変化によって血管外から血管内に毒素が入る
↓
血液がきれいになる
↓
また血管内に毒素が入る
この繰り返しによって毒素が除去されています。
ほなKt/V=1.0で透析は十分なんじゃない?
結論から言うと不十分です。
なぜかというと、透析中の体液は毒素のある部分と毒素の無い部分が混ざりつつ、徐々に減っていきます。
なので、Kt/V=1.0では毒素は十分に抜けきってはいません。
さらに、ダイアライザを通過した毒素はすべて除去されるわけではなく、少しは血液中に毒素が残ってしまいます。
物質除去の理想と現実
理想のダイアライザは、ダイアライザに流入した全ての血液の毒素が完全に除去されることです。
つまり、「尿素クリアランス=ダイアライザ血流量」となります。
しかし、現実のダイアライザではダイアライザから流出する血液の中に尿素が少し残ります。
したがって、現実のダイアライザのクリアランスは、血流量よりも必ず小さいということになります。
なのでKt/V=1.0では不十分なんです。
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