透析治療をしていると頻回に出くわすのが、「残血」です。
残血は箇所によって原因が異なります。
そしてなぜ残血が起きているか、発生原因ごとの対策があります。
今回はAチャンバの残血について解説します。
残血があったときまずどうする?
返血をした時に残血があった場合、まず確認するのは「どこ」に「どの程度」残血があるのか、です。
①どこに(Aチャンバ・Vチャンバ・ダイアライザ)
②どの程度(1+,2+,3+であらわします)
2つが確認できたら、再現性があるのかどうか次回の残血も確認します。
そこで残血がなかった場合、変に対策をするより様子見をします。
残血はその日の患者の体調や穿刺の具合で変わってきます。
例えば、その日たまたま風邪ひいてたとか、穿刺のミス(A側)があった場合は残血に繋がります。
残血が起こる原因5選
①ヘパリン量が不足している
②CRPが高い(炎症反応)
③穿刺(A側)の失敗や時間がかかった
④脱血不良
⑤血液の濃縮(除水量が多い、オンラインHDF時)
①ヘパリン量が不足している
ヘパリン量(抗凝固量)が不足していると抗凝固の作用が弱くなるので、血液が固まりやすくなり残血に繋がります。
②CRPが高い(炎症反応)
炎症反応が起きている場合は、血球にストレスが加わっています。
血液が回路(異物)に触れたり、空気に触れた場合の凝固反応は通常の時よりも敏感です。
③穿刺(A側)の失敗や時間がかかった
回路凝固の約7~8割は「穿刺時のトラブル」です。
A側穿刺を失敗した、または内筒を出し入れした、ぐりぐりした時は凝血が非常にできやすくなります。
なぜかというと、血球にかなりのストレスがかかるからです。
また内筒の出し入れや、ぐりぐりして時間がかかった場合は針先に血栓ができ、その血栓が回路に流れ込み、他の血液も凝血しやすくなります。
血管内の血栓を引き込む可能性もあります。
④脱血不良
脱血不良がある時は回路内が陰圧になります。
陰圧になると空気(微小気泡)が発生し、空気と接触した血液は凝固反応が促進します。
血球は陽圧には強いが、陰圧に弱いという性質があります
⑤血液の濃縮(除水量が多い、オンラインHDF時)
除水量が多いと血液が濃縮(どろどろの状態)します。
血液が濃いと回路凝固を起こしやすくなります。
またオンラインHDFでは補液量が多いと、その分濾過する量も多くなるので、血液が濃縮します。
Aチャンバの凝血《原因と対策》
Aチャンバが凝血で固まったというのはほとんどないと思います。
もしAチャンバが固まって透析ができない状態であれば、おそらく透析開始時に何らかのトラブルがあった場合と考えられます。
私は以前1回だけありましたがその時は、透析開始時にトラブルが起こり、Aチャンバまでの回路内が凝血して血液ポンプを回した時に、血栓がAチャンバに入ったというものでした。
Vチャンバが固まるような現象のものとは少し違います。
また、ピローに溜まったコアグラ(凝血)はAチャンバに流れるので多少のAチャンバ凝血は気にしなくていいでしょう。
もしA側だけ残血があり、ダイアライザやVチャンバに残血がない場合は以下のようなことが考えられます。
原因①ヘパリンの量が不適切
ヘパリン(抗凝固剤)の量が少なすぎると残血につながります。
【対策】
ヘパリン量の調節をする
ヘパリンの量が適切かどうかは、体重によって異なります。
・未分画へパリン:持続投与量10~25IU/kg/hr
➡体重50kgの人であれば、1時間当たり500単位~1250単位の間で調節
・低分子ヘパリンの場合:持続投与量5~10IU/kg/hr
➡ 体重50kgの人であれば、1時間当たり250単位~500単位の間で調節
体重が100kgの人は50kgの人よりも血液循環量が多いです。
なので体重によって調節してあげる必要があります。
また、ヘパリンのワンショット量(初回投与量)も適切かどうか見てみましょう。
・未分画へパリン:初回投与量20~50IU/kg (持続投与の2倍)
➡体重50kgの人であれば、1000単位~2500単位の間で調節
・低分子ヘパリンの場合:初回投与量10~20IU/kg (持続投与の2倍)
➡ 体重50kgの人であれば、1時間当たり500単位~1000単位の間で調節
透析ではワンショットが非常に重要です。
考え方としては
・ワンショット→最初の抗凝固作用を発揮
・持続量→ワンショットの抗凝固作用を持続するもの
なのでワンショットが適切ではないと、持続されないまま透析が終了し残血につながるということです。
原因②脱血不良
脱血不良があると、微小気泡が発生したり、回路内圧が陰圧になったりして血液が固まりやすくなります。
【対策】
脱血不良の改善
🌸シャント状態の確認
🌸穿刺部の見直し
🌸QBの変更
脱血不良がある場合、その場の対応としてはQBを下げ回路に陰圧がかからないように調節します。
QBは脱血不良が起こらない程度に下げてあげます。
次回穿刺する場合は穿刺部の変更もします(場合によっては同部位に穿刺して再現性があるかどうか確認します。たまたまかもしれないので)
続く場合や、シャント狭窄が見られる場合はエコーや造影をオーダーします。
原因③開始に時間がかかった
穿刺の際に時間がかかったりした場合は、血液が固まってしまいます。
炎症が強い患者や血糖値が高い患者は血液が固まりやすい傾向にあります。
【対策】
手技を徹底する。
最初の頃は手技が遅いので時間がかかってしまう場合があります。
経験を積み重ねて早く、そして正確に練習していかないといけません。
患者さんによっては針を刺してつなぐまでの間で固まってしまう方もいます。
なので、スピーディーにかつ正確に作業するというのは大切です。
頻回に針先が固まってしまうという患者さんには、穿刺してすぐに生食を通しあげると良いでしょう
原因④穿刺の失敗
穿刺を失敗してそのまま血液ポンプを回した場合血栓もそのまま引き込むことがあります。
これは私が見た例なのですが、、、
穿刺をして血液ポンプを回した。
すると針がきちんと血管内に入っておらず(中途半端に入っていた)、回路の途中まで血液が来たところで、脱血ができなくなり、血液ポンプをストップさせた。
針先を直し、きちんと針が血管内に入りもう一度血液ポンプを回した。
すると、その間に最初に入っていた回路内の血液が固まってしまい、血栓がAチャンバに流れ、Aチャンバが固まってしまった。
こういった例でAチャンバが凝血してしまいました。
【対策】
・針が血管内にきちんと入ったかどうか不安な場合はシリンジで引いてみる
・穿刺失敗時の対応を身につける
・時間がかかってしまいどうしようもない時は、早めにスタッフを呼んで対処してもらう
穿刺を失敗してしまったり、つまづいて焦ることはありませんし、自分で対処できなければスタッフを呼んで対処してもらいましょう。
その時に、次起こった時に自分で対処できるように覚えることが大切です。
【Vチャンバの残血対策はコチラです!】
【ダイアライザの残血対策はコチラです】
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