はじめに
静脈圧とはVチャンバ内にかかる圧力のことです。
この圧力が高ければ「静脈圧上限アラーム」、低ければ「静脈圧下限アラーム」が鳴ります。
静脈圧下限アラーム《原因と対処》
①脱血不良
②Vチャンバまでの回路の折れ
③Vチャンバまでの間で凝固が起きている
④珍しいケース2つ
①脱血不良
脱血不良が起きると、Vチャンバに圧力が伝わらないので下限アラームが鳴ります。
【原因と対策】
✅穿刺場所のフローが少ない➡脱血がしっかり取れる場所に再穿刺する
✅外筒が血管壁に当たっている➡針先調整
✅外筒が血管まで到達していない(血管壁を切りきれてない)➡針先調整
また、血流を落として対処することもよくあります。
どうしても脱血が変わらない場合はQBを落として様子を見ましょう。
血圧が下がって脱血不良になることもありますので、患者のバイタルもチェックしておく必要があります。
★血圧下がる➡循環血液流速が落ちる➡脱血不良
どうしても脱血が十分に取れない場合は、上腕を駆血して脱血をとれるようにするという方法もあります。
②Vチャンバまでの回路の折れ
Vチャンバまでの間で回路の折れがあると圧が伝わらないので下限アラームが鳴ります。
開始時にAのラインクランプを閉じたままにしていたりなどです。
その場合は、回路の閉塞を解除します。
下図の黄色線の部分での回路の閉塞です
③Vチャンバまでの間で凝固が起きている
どこで凝固が起きる可能性があるのか?
《Aチャンバの凝固》
回路凝固のほとんどがVチャンバで、Aチャンバが凝固するのは極めて珍しいケースです。
私は6年間で1回だけ見ました。(たった6年のデータで申し訳ない)
Aチャンバの凝血はヘパリン量の見直しや、穿刺時のトラブルが原因です。
ヘパリンの量が合っていないと体から返ってきた血液が、機械に入りダイアライザに入るまでに抗凝固作用が失われているということです。
《穿刺時のトラブルはこんなケースがありました》
穿刺して、機械を回した。うまく針が入っておらず、回路内の血液が血液ポンプに到達するくらいで脱血が取れなくなった。
あれなんでだろうと考えて、次の処置をするまでに時間がかかり、再度機械を回し始めた時には、先ほどの回路内の血液が固まっていた。
その凝血がAチャンバに運ばれて、Aチャンバ凝血となった。
こんな感じのエピソードがありました。
《ダイアライザ内の凝血》
ダイアライザ内の血液が固まることもたまにあります。
✅ダイアライザの膜素材が合っていないか➡ダイアライザの膜素材変更
✅ヘパリンの量が少ないか➡ヘパリン量の見直し
✅炎症反応があるか➡ヘパリン量の一時的な見直し
✅毎度決まったタイミングで補液をする(凝血対策)
また、ダイアライザ凝血の原因として先ほどのように開始時の穿刺トラブルが原因となることもあります。
④珍しいケース2つ
①ピローの中が凝血
②ダイアライザ出口部からVチャンバ入り口までが閉塞している時(普通の圧変動と違う)
①ピローの中が凝血
ピローの中が凝血していると、下限アラームが鳴ります。
しかしこれって意外と気付かないんですよね。
なぜかというと、静脈圧下限アラームが鳴る場合はピローも一緒に凹んでいて脱血できていない時がほとんどです。
しかしピローの中に凝血がある場合は、ピローはパンパンに膨らんでいるのに、静脈圧下限のアラームが鳴るから、大体の人が騙されます。
「ん?機械がおかしいのか?」「圧がちゃんと測れてないよー」とかいう人が出てきます。
ピローが膨らんでいてV圧の下限で鳴る時は、ピローの中に凝血があるかも!?という考えを持つことも頭の隅に置いててください。
②ダイアライザ出口部からVチャンバ入り口までが閉塞している時
これは下限アラームが当然鳴りますが、何が珍しいのかというと静脈圧は下限で鳴り、透析液圧は上がっていくからです。
普通は静脈圧が下がると、それに追従して透析液圧も一緒に下がります。
しかしここの部分の閉塞だけ、静脈圧が下がり、透析液圧が上がるので、みんなだまされます。
覚えておきましょう!
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