返血をした際にダイアライザに残血があることはよくありますよね。
なんかこの残血気持ち悪いな、、、
患者さんはダイアライザ「赤いなぁ」って思ってたり。
本記事ではダイアライザの残血対策についてまとめています。
ダイアライザ残血の原因5選
①脱血不良
②抗凝固量が不足している
③生体適合性が合っていない
④CRPが高い
⑤濃縮が起きている
①脱血不良
脱血不良が起こり、残血につながるの原因は「微小気泡の発生」と「回路内の陰圧」です。
微小気泡が発生し、ダイアライザに流れ込むと、中空糸内で血液と空気が触れ合い、凝血が促進されます。
また回路内が陰圧になることで、血液は固まりやすくなります。
血球は陽圧には強いが、陰圧には弱いという性質があります
②抗凝固量が不足している
抗凝固量が不足していると、凝固作用が透析最後まで(4時間)保持できず、血液が固まりやすくなります。
③生体適合性が合っていない
ダイアライザには合成高分子で6種類の膜、セルロース系で3種類の膜があります。
膜の種類が違うと、性質が変わってきます。
そして人によっては、この膜は合うけどこの膜は合わない、ということが起こります。
PS膜では残血ができないけど、PMMA膜では残血が起きるみたいなこと
つまり膜の性質が合うかどうか(適合性)人それぞれです。
④CRPが高い
CRPが高い、炎症反応がある、たまたあま風邪をひいているなどの人は血液が固まりやすくなります。
炎症傾向にある血液は過敏な状態と思ってください。
その過敏な血液がダイアライザの中空糸の中を通ると、血球がストレスを受けて凝固反応が促進します。
⑤濃縮が起きている
除水量が多い、OHDFでは濾過量が多い(補液量が多い)場合は血液濃縮が起きやすく凝固しやすくなります。
濃縮が起きているということは、血液の粘度が高くドロドロな状態です。
ダイアライザの残血対策
①脱血不良の改善
②抗凝固量の調節
③補液100ml(開始1時間目)
④補液100ml(終了1時間前)
⑤ダイアライザを変更する
これら5つを対処を原因ごとに使い分けるといいでしょう。
原因と対策5選
原因ごとの対策を紹介します。
原因①:脱血不良
対策:脱血不良の改善
原因②:抗凝固量が不足している
対策:抗凝固量の増量
原因③:生体適合性が合っていない
対策:ダイアライザの変更
原因④:CRPが高い
対策:補液100ml(開始1時間目)
原因⑤:濃縮が起きている
対策:補液100ml(終了1時間前)
原因①:脱血不良 対策:脱血不良の改善
脱血不良が起きている場合は、脱血不良を改善することが重要です。
透析中であれば、針が血管壁にあたっているかもしれないので針先を引いたり、針の向きが違う場合もあるので、向きの調節を行います。
それでも改善しない場合は、QBを下げて血流量の取れる範囲で透析を回すしかありません。
再現性のある脱血不良は、シャントエコーや造影検査を実施し、狭窄がないか、シャント血流量がどのくらいかを精査します
脱血不良が毎回発生する場合は以下のようなことが考えられます。
✅狭窄がある付近に穿刺している
✅シャント血流量が少ない
こういった原因が考えられるので、シャント音やスリルを確認したうえで、穿刺場所を変えてみましょう。
またそれと同時にシャントエコー検査や造影検査を行い、狭窄の有無やシャント血流量を測定します。
問題があった場合はVAIVTをして血管を拡張して血管トラブルを解決します。
また透析中にどうしても脱血が取れない場合は、脱血穿刺部位の中枢を駆血させる方法があります。
原因②:抗凝固量が不足している 対策:抗凝固量の増量
抗凝固量が不足している場合、4時間の透析で十分な抗凝固の作用が発揮できずに、残血につながります。
では、抗凝固量はどう選ぶの?というところですが、体重によってこのくらい投与してくださいねという目安があります。
・未分画へパリン:持続投与量10~25IU/kg/hr
➡体重50kgの人であれば、1時間当たり500単位~1250単位の間で調節
・低分子ヘパリンの場合:持続投与量5~10IU/kg/hr
➡ 体重50kgの人であれば、1時間当たり250単位~500単位の間で調節
体重が100kgの人は50kgの人よりも血液循環量が多いです。
なので体重によって調節してあげる必要があります。
また、ヘパリンのワンショット量(初回投与量)も適切かどうか見てみましょう。
・未分画へパリン:初回投与量20~50IU/kg (持続投与の2倍)
➡体重50kgの人であれば、1000単位~2500単位の間で調節
・低分子ヘパリンの場合:初回投与量10~20IU/kg (持続投与の2倍)
➡ 体重50kgの人であれば、1時間当たり500単位~1000単位の間で調節
透析ではワンショットが非常に重要です。
考え方としては
・ワンショット→最初の抗凝固作用を発揮
・持続量→ワンショットの抗凝固作用を持続するもの
なのでワンショットが適切ではないと、持続されないまま透析が終了し残血につながるということです。
原因③:生体適合性が合っていない 対策:ダイアライザの変更
ダイアライザの膜の種類がその人の体に合っていないと、血球がストレスを感じ凝固促進につながります。
ダイアライザには合成高分子膜、セルロース系膜合わせて9種類あります。
それぞれ構造が違ったりするので、その人によって合う、合わないがあります。
例えば、PS膜は残血が少ないが、PMMA膜では残血が著名みたいなこと
なので、その場合はダイアライザを変更してみましょう。
特徴として、A、Vチャンバに残血が無く、ダイアライザのみ残血がある場合は、ダイアライザの変更をして解決することがよくあります
原因④:CRPが高い 対策:補液100ml(開始1時間目)
炎症反応が合ったり、CRPが高い、白血球が高く感染を起こしている場合は、血液が固まりやすくなります。
この場合は開始1時間目に補液100mlしてみてください。
透析では最初の1時間に血小板数や白血球数が変動します。
とうことは最初の1時間は血球がストレスを受けて血液が固まりやすくなります。
感染症状があるならなおさらです。
なので、最初の1時間で補液をして、イメージ的には中空糸内を補液で満たしてあげて血液がスムーズに中空糸内を通るような感じです。
原因⑤:濃縮が起きている 対策:補液100ml(終了1時間前)
除水量が多かったり、OHDFで濾過がかなりかかっている(補液量が多い)場合では血液が濃縮し、ドロドロの状態になるので血液が固まりやすくなります。
この場合では終了1時間前に補液100mlしてみてください。
終了1時間前というのは血液の粘度かなり濃くなってくる時間帯です。
これは静脈圧やTMPで判断してください。
最初と終わりのころの静脈圧とTMPをモニタリングします
血液濃縮が起きていると、最初に比べてこれら2つの圧は上昇しているはずです。
また、濃縮がかかってくる時間が終了の1時間半前とかだったら、そのくらいに補液をするなど調節してみてください。
また濃縮予防には「ダイアライザの変更」や「QBの変更」もしてみてください
除水量が多いのに、ダイアライザの膜が小さすぎたり、UFRの低いものを使っては濃縮につながります。
膜面積をUPできるならします。
またQBは少ない方が濃縮につながるので、QBもUPして早く回せるようならした方がいいでしょう。
大体この5つの原因、対処かなと感じます。
透析にはこれら以外にも複雑な要因が絡んでいることもありますので、よく観察して対処してみてくださいね。
ダイアライザ残血対処フローチャート
残血においての解決フローチャートです。



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