はじめに
透析中の低血圧を透析低血圧と言います。
定義はあるのか、他にも気になる疑問を解決していきましょう!
透析低血圧(IDH)ってなに?
IDH:Intradialytic hypotension
透析中に生じる低血圧を透析低血圧と言います。
【定義】透析中に血圧が収縮期として20mmHg以上、あるいは症状を伴って平均血圧※が10mmHg以上、急激に低下した場合
※ 平均血圧=脈圧(収縮期血圧 – 拡張期血圧)÷3+拡張期血圧
透析中の最低収縮期血圧が110mmHg未満の患者では、心血管死のリスクは1.9倍になるといった報告もあります(1)
透析中に収縮期血圧が20mmHg以上低下する方は案外いるけど、要は、急激な血圧低下によって生じる各臓器・組織への血流低下を防止しなさいよってこと ですね
(1)Shoji, T. et al. Hemodialysis-associated hypotension as an independent risk factor for two-year mortality in hemodialysis patients. Kidney Int. 66 (3), 2004,1212-20.
徴候・症状
血圧が下がる前の徴候を把握し、早めの対処が必要になります。
徴候
- あくび
- 冷や汗
- 嗄声(声がかすれる)
特に背中の汗は要チェックです!
血圧低下時やその徴候が見られる場合はで背中に汗をかきやすいです
症状
- 腹部不快感
- 吐き気、嘔吐
- 頭痛、めまい
徴候が見られた、症状がでた(でる前に)ら血圧測定し、対処します。
失神させないように早期発見が大事です。
対処
透析低血圧が起こったら以下のような対処をします。
- 除水ストップ
- 下肢挙上
- 補液
- 20%ブドウ糖液の投与
これらを適宜、適切なタイミングで試行します
除水ストップ → 症状が無かったら、除水量を下げるのでもOK
下肢挙上 → 5分くらいしてたら血圧は上がってくる
補液 → 基本100mL。状態を見て追加する
20%ブドウ糖液の投与 → 血圧改善に最も影響を与える報告もある。100mL投与。DM患者には注意
(2)Nette, RW. et al. Specific effect of the infusion of glucose on blood volume during hemodialysis. Nephrol. Dial. Transplant.17 (7), 2002, 1275-80.
よくある質問①
透析中、下肢挙上をずっとしていますが、効果があるのでしょうか?
長時間の下肢挙上は効果はありません。
下肢挙上は緊急的に血圧を上げる方法です。
血圧が下がった時に下肢挙上はOKですが、長時間は控えた方が良いです
また、下肢挙上は7分のみの効果という報告もあります(3)
下肢挙上を長時間していると、下肢の末梢循環不全になる可能性があります
特にそのリスクの高い「糖尿病患者」や「末梢動脈疾患」の方は要注意です。
(3)Gaffney, F. A., Bastian, B. C., Thal, E. R., Atkins, J. M., & Blomqvist, C.G. (1982). Passive leg raising does not produce a significant or sustained autotransfusion effect. The Journal of trauma, 22(3), 190–193.
よくある質問②
血圧低下時の塩化ナトリウム(NaCl)はどう思いますか?
個人的にはしなくていいと思います。
NaClを透析の後半に投与すると…
透析が終了してもNaClが抜けない → 飲水で浸透圧を一定にする → 透析間の体重増加
といった流れになります。
ただ、NaClは1時間半程度で抜けるらしい(?聞いた話)ので、残りの透析時間によっては投与しても問題ないかもしれないです。
私個人的には、NaClは不必要だと感じています。
なぜかというと、NaClを投与しなくても血圧を上げる方法はたくさんあります。
なのでわざわざNaClを投与する理由がありません
考え方は個人によって違ってくるとは思いますがあくまで私の意見です。
他にもこういった疑問が!
- 血圧低下時の酸素投与は意味ありますか?
- 血圧低下時にQBを下げるのは効果がありますか?
これらはコチラで解説しています。
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