はじめに
透析モードにはHDやHDFなどありますが、IHDFというモードもあります。
間歇的に補液をすることによって、末梢循環の改善や血圧低下を抑制したりする効果があります。
また、昨今の透析に関する保険点数の縮小化で、IHDFを導入する施設も多くなってきているのが現状です。
今回はIHDFってなんなのかを解説します。
IHDFってなに?
IHDF(Intermittent Infusion Hemodiafiltration):間歇補充型血液透析濾過
- Intermittent:間歇
- Infusion:補充
- Hemodiafiltration :血液透析濾過
IHDFとは、間歇的な補液を計画的に繰り返していくことで、末梢循環改善効果や血圧防止効果が期待される治療法です。
間歇的にというのは一定間隔でといった意味です。
基本的には30分に1回補液が入ります。(20分に1回もあったり、メーカーによっては自由に組み合わせができますよ)
また栄養状態への影響が少ないので、高齢者や栄養状態の悪い患者さんに適した治療法です。
補液は逆濾過という原理で膜に入っていきます(下図)
逆濾過とは正濾過の反対です。
- 正濾過:除水の濾過(血液側→透析液側へ水が流入)
- 逆濾過:正濾過の反対(透析液側→血液側へ水が流入)
基本設定
- 補液間隔:30分に1回 または、20分に1回
- 補液量:100~200ml
- 補液時間:1回につき約2分
- 補液速度:150ml/min程度
- 補液回数
- 7~8回→透析4時間で30分に1回の場合
- 11~12回→透析4時間で20分に1回の場合
基本的には4時間透析で30分に1回の補液の場合は、始まりはいきません。
なので7回の補液になります。
補液量は100mlがいいのか?200mlがいいのか?次で解説します。
補液量は100ml?200ml?
補液量を設定するときに、100nlにするのか?200mlにするのか?
- 透析前体重52kg以上 → 200ml/30min
- 透析前体重52kg未満 → 100ml/30min
IHDFの補液量と血圧の安定効果についての論文「Blood Purification」掲載
52kg未満では100ml/30minで十分という結果が出ました。
補液量は体重によって調節する必要があります。
なぜ52kgが境なのか?
循環血液量の変化として、10%程度の働きは日常的に起こっているからです。
- 仰臥位→立位:血漿量が10%減少する。
- 立位→仰臥位:循環血液量の約11%が下肢から全身に移行
このような感じで日常生活の動作で10%くらい変動しています。
IHDFでの急速補液量は安全性も考慮して、循環血液量の5%以内と設定しています。
つまり、体重52kgの循環血液量の5%が200mlとなります。(下図)
臨床効果3つ
- 末梢循環障害の改善
- 膜性能の劣化抑制
- 血圧低下予防
1つずつ解説していきます。
①末梢循環障害の改善
IHDFの効果の中で一番有力なものかなと思います。
間歇的な補液で末梢循環障害が是正されます。
【なぜ末梢循環が是正される?】
透析中では除水の影響で身体の水分が枯渇し、深部では細小血管がさらに細くなります。
そこで間歇的に補液をすると細くなった血管がまた開いて、末梢循環の改善につながります。
また、細小血管が開くことで深部から老廃物を掻き出す効果が期待できるそうです(あくまで理論上です)(下図)
末梢循環障害改善により、リフィリングレートが増大し、それに伴い血管外からの溶質移動が促進されます。
②膜性能の劣化抑制
逆濾過をするので、膜が洗浄され、膜性能の経時的劣化を防ぐことができます。
逆濾過によって透析膜の内側に付着した、老廃物やタンパク質を洗い出してくれます。
また、濃度の偏りも失くすと言われています。
いわゆるファウリングの抑制です。
ファウリングとは、透析膜の内側に蛋白質が付着してしまことです
これによって、TMPが高くなったり、アルブミンリークする恐れがあります。
③血圧低下予防
除水によって生じる循環血液量の減少抑制による血圧の維持効果があります。
ただしこれには問題点もあります。
血圧低下予防効果についてはあとで解説します。
補正UFRってなに?
IHDFは補液した量も引かないといけません。
除水量が2000ml(0.5L/h)で、補液量が1600mlだった場合、実際の除水量は3600mlです。
この3600mlを「補正除水」といいます。
また、3600mlを4時間で除水するので0.9L/hかかることになります。
この0.9L/hを「補正UFR」といいます。
なので、コンソール画面が0.5L/hと表示されていても、補液分も引かないといけないので、実際は0.9L/hで除水は行われています。
IHDFの問題点3つ
- 血圧低下予防?
- 血圧測定のタイミング
- 透析効率UPは本当か?
IHDFは問題点もいくつかあります。
また実際にIHDFを使用してみての、個人的見解も述べていきます。
①血圧低下予防?
IHDFの効果としてあるのが、血圧予低下予防です。
実際使用してみて血圧低下予防になる人とならない人がいますし、なんならこの効果が見られない人の方が多いです。
なぜかというと、補液はされますが当然補液分も除水するので、体のIN,OUTのバランスは普通のHDと変わらないからです。
また、補正UFRもかなりきつくなります。
補液した分も引くので、1時間当たりの除水量はかなりきつくなります。
それを30分に1回の補液で補いを繰り返すので、血圧の上下も激しくなりますし、体への負担もあると考えます。
やがて、補液では補えなくなり血圧が下がってしまいます。
② 血圧測定のタイミング
IHDFでは血圧測定のタイミングが非常に重要です。
補液直前では血圧が下がっており、補液直後では血圧が上がっています。
なので、どのタイミングで血圧がいくらなのかという評価が大切です。
現場でよくあるのが、血圧下がっていて除水0に。(患者自覚症状なし)
でもそれは補液直前で補液後に血圧上がるから、除水かけててもよかったのに…。
みたいなシーンはよくあります。
補液前なのか、補液後なのかというタイミングを見ればいいんですが、現場が忙しかったりすると、それを見る時間もなかったりしますよね(;^ω^)
③透析効率UPは本当か?
IHDFでは、補液によって細小血管が開き老廃物を掻き出し、効率UPなどとの効果もあります。
しかし、HDからIHDFに変更した患者の効率は下がっていることが多いですね。
なぜかというと、補液中は拡散がされていないからです。
1回の補液の時間が約2分です。
透析1セッションで7回補液するとなると、14分補液の時間に費やされます。
補液中は拡散がされていないので、14分間は老廃物除去されていないことになります。
補液前の準備も含めたら、14分以上に拡散は止まっています。
老廃物の掻き出しは実際にあるかもしれませんが、数字上では見られないことが多いです。
老廃物の掻き出し効果は、下図を参考にしてください。
P-IHDFってなに?
P-IHDF:Program-IHDF
P-IHDFとは、補液量を一定ではなく、後半に多くしたり前半に多くしたりする、プログラムを組んでいるIHDFのこと
血圧が下がるタイミングによって、補液量も調節し、患者個々に合わせた治療ができるといった特徴があります。
P-IHDFにも種類があります。
- 補充終了型:最後に補充で終了し、回収を行わないモード
- 単発型:補液は単発的
- 階段状補充強化型:補液を階段状にする
- 後半に血圧が下がりやすい人:後半に補液量を多くする
- 前半に血圧が下がりやすい人:前半に補液量を多くする
下図を参考にしてください。
最近ではHot shot IHDF(HS-IHDF)といって、透析液を加温することでプラズマリフィリングを促すといったような方法もありますよ。
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