はじめに
近年急速に普及してきているオンラインHDFですが、補液方法の違いによって後希釈と前希釈があります。
後希釈にはQBの制限(QBを多く回さないといけない)があります。
後希釈とQBの関係はめちゃくちゃ重要で、これを知らないと透析中のトラブルにつながります。
今回は後希釈とQBの関係について解説します。
なぜ後希釈はQBを多く回さないけないの?
- 透析膜や回路の血液過濃縮
- アルブミンリークの可能性
後希釈では除水をしてからVチャンバから補液されるので、透析膜の血液が固まりやすくなります。
なので、QBを多く回さないと回路や透析膜が凝固します。
どのくらいのQBが必要かは後で説明しています。
前希釈ではAチャンバに補液してから、除水をするので、薄まった血液が透析膜に入ります。
そのため後希釈よりかは透析膜の凝固は起きにくいとされています(補液量によるが)
膜内の血液が固まったり、回路全体の血液が濃縮してしまうとアルブミンリークにつながります。
アルブミンリークとは、透析膜に大きな濾過圧が加わり、アルブミンが抜けてしまうこと
膜内の血液が凝固、あるいは過濃縮してしまうと、濾過圧が多く加わります。
濾過圧が多く加わると、アルブミンなどの大きな物質も中空糸の孔を通り抜けてしまいます。
すると、栄養障害が出てきたり食欲が低下してしまったりするので、要注意です。
イメージ的には、ザルにサラサラな水を注ぐと何の抵抗もなく水は通り抜けていきます。
しかし、ドロドロの水をザルに注ぐと、サラサラな水よりもザルを通り抜けずらくなります。
なので僕らが手で押したりして通り抜けさせてあげます。
この手で押す力が透析でいう濾過圧です。
この濾過圧が多く加わると、アルブミンなどの大きな物質も通り抜けてしまいます。
この濾過圧というのはTMPです。
目安はTMPが150~200を超えてきたらアルブミンリークが助長されると言われています。
【TMPはコチラの記事で解説しています】
じゃあどのくらいの血流量(QB)を回さないといけないのかというのを解説していきます。
総濾過量の4倍の血流量が必要
後希釈ではQBの設定というのがめちゃくちゃ重要です。
このQBの設定を間違えると、血液凝固を助長してしまいますし、透析時のトラブルにつながります。
後希釈では濾過量は血流量の25%が上限と言われます
これを言い換えると
総濾過量(補液量+除水量)の4倍の血流量が必要ということです
なぜ言い換えたのかというと「濾過量は血流量の25%が上限」だと、血流量に合わせて除水を変えていくっていうニュアンスの意味になってきます。
透析治療をしていくうえで除水が一番重要となってきますので、血流量に合わせて濾過量を決定するというのは基本ないからです。
これだと、血流量が一番大事で、除水や補液量が2番目に大事という表現になっていますので、ナンセンスだなと思って言い換えました。
で、本題に戻りますと、総濾過量の4倍の血流量が必要というのはどういうことか説明します。
まず総濾過量というのは補液量+除水量となります。
まず補液量から見ていきましょう。
例えば補液量が1回4時間の透析で12Lだとします。
これをml/minに直してください。
すると12L/4h=3L/h=50ml/min になります。
次に除水量が1回4時間で3Lだとします。
これもml/hに直します。
3L/4h=750ml/h=12.5ml/min になります。
この2つの数字を合わせたものが総濾過量になります。
なので、50+13=63(ml/min)です。(12.5は13にしました)
そして、この総濾過量4倍の血流量が必要ということです。
63×4=252(ml/min)
なので、QBは252以上回したら、血液凝固などのイベントは起きにくくなりますよということです!
後希釈の場合はこういう風にQBを設定します。
経験上3.5~4倍くらいで十分です。
なので先ほどの条件で考えるとQBは220~250くらいの間であればOKです!
【関連記事】
コメント