はじめに
透析ではダイアライザの中で内部濾過が発生しています。
この内部濾過とは何か?解説していきます。
内部濾過ってなに?

透析療法では「血液側」と「透析液側」で内部濾過が生じています
- 血液側流入部:正濾過が起きやすい
- 血液側流出部:逆濾過が起きやすい
ダイアライザの内部では「正濾過」と「逆濾過」が存在しています。
これを合わせて内部濾過現象といいます。
では正濾過、逆濾過とは何か説明していきます。
正濾過、逆濾過ってなに?
では正濾過、逆濾過とは何か説明していきます。
- 正濾過:血液側 → 透析液側へ水が移動
- 逆濾過:透析液側 → 血液側へ水が移動
この内部濾過現象は以下のように圧力差によって発生します。

【正濾過】
透析膜の血液側入口付近では、血液側の圧力の方が透析液側の圧力より高いので、正濾過が起きます
【逆濾過】
血液側出口付近では、血液側と透析液側の圧力が逆転して、透析液側の圧力の方が高くなるので、逆濾過が起きやすくなります

血液側も透析液側も、入口から出口に向かって、圧力損失により圧力は減少していきます。
そのため正濾過と逆濾過が起きます。
内部濾過促進型血液透析(IFEHD)
IFEHD(Internal Filtration Enhanced HemoDialysis)
内部濾過促進型血液透析(IFEHD)とは、内部濾過を意図的に促進させた透析方法です
近年ハイパフォーマンス膜の普及により注目されています。
内部濾過を促進させると、濾過(対流)による物質移動を加味することができます。
つまりちょっとしたHDFができるってことです。
HDでありながらHDFに近い溶質除去が期待できます。
牛血系in vitro実験では、ダイアライザ血液入口付近で正濾過、出口付近で逆濾過が確認され、市販高性能ダイアライザの一部では1回の治療で5L近い内部濾過がすでに生じており、HDFに近いもしくは同等の溶質除去特性が期待できることが判明した。
との記載がされているものもあります。
(●特集 血液透析器の最新技術 血液透析器の溶質除去特性 「内部濾過現象を意識した新しい設計概念」)
HDFの適応じゃなく、やむを得ずHDを受けなければならない場合にとって、IFEHDは有効な治療法の1つとして利用されます。
内部濾過促進型血液透析(IFEHD)の注意点
内部濾過は促進させるほどいいんだ!
と思うかもしれませんが、
注意点をしっかり知っておきましょう。
内部濾過を促進しすぎると、血液流入部付近で大きな圧力差がかかります。
するとファウリング(血漿タンパクの膜への付着)が顕著に生じ、かえって膜の透過性を大きく低下させる可能性があります。
「溶質除去促進効果」よりも「性能の経時劣化」の方が上回ってしまう
なので、期待された溶質除去能が発揮されないことがあります
内部濾過促進の有効性を保持した、操作条件(治療条件)の設定が重要になります。
内部濾過を促進させるためにはどうすればいい?
結論、透析膜内の圧力損失を大きくすればいい
圧力損失が大きくなる
↓
TMPが大きくなる
↓
内部濾過が促進される
では圧力損失を上げるためにはどうすればいい?
それには、ハーゲンポアズイユ(Hagen–Poiseuille)式を知っておきましょう
ハーゲンポアズイユ式とは、中空糸のような円管内を、流体が層流で流れるときの圧力損失の式です
(ハーゲンポアズイユの式は、濾過が生じるケースでは厳密には成り立たない)
このハーゲンポアズイユの式は以下の通りです。

ではこのμとかLとかのアルファベットが何を表しているかを以下で説明します。
- ⊿P:圧力損失
- μ:血液粘度
- Leff:中空糸有効長※
- QB:血流量
- n:中空糸本数
- D:中空糸内径
※ 実際に血液が通る長さ
つまり分子の「μ」「Leff」「QB」が増えると圧力損失が増え、内部濾過が促進されます。
そして分母の「n」「D」が減ると圧力損失が増え、内部濾過が促進されます。
ただ、実際の濾過速度は圧力差のみならず、膜の透水性と膜面積にも依存します。
従って、ダイアライザの透水性が高まるにつれて内部濾過量も増大します。
内部濾過のさらに詳しい情報や、圧力損失はコチラで解説しています。
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