はじめに
透析患者では「α1-MG」という比較的大きなたんぱく質(分子量:33000)が体の中に溜まってしまいます。
α1-MGはオンラインHDFによって除去効率が上がります。
置換液量を増やせばα1-MGの除去率もUPしますが、血流量と置換液量が多くなりすぎると、シアストレス(血管内のストレス)がかかり、生体適合性が悪くなります。
また、血小板が過剰に活性化されると、動脈硬化の促進に繋がります。
α1-MG除去による成果
HDから前希釈オンラインHDFに変更したあとの患者のQOLを調査した結果を紹介します。
α1-MGの除去率が40%近くに上がるという良い結果が得られました。
次に透析アミロイド症です。
低アルブミン血症になった患者に対して、、、
✅除去効率を落とすと➡1ヶ月後にこぶしが握れなくなった
✅そこから、除去効率を上げていくと➡ぐっと力が入るようになった
という結果が報告されました。
これは除去されることによって新生されたα1-MGの※ラジカルスカベンジャーとしての働きが作用したためだと考えられています。
※ラジカルスカベンジャーとは?
ラジカルスカベンジャーとは、透析では有害とされている活性酸素や過酸化脂質などから、細胞を守るための防御機能のことをいいます。
これらを無害なものに変える働きを持っています。
また、不定愁訴の中に下肢のイライラ感があります。
HDから前希釈OHDFに変え、α1-MG除去率が40%以上となるように維持したところ、下肢のイライラ感は消失した。
α1-MGの除去率
α1-MGの除去率は30%以上できていれば、良しとされますが、もっと言うと40%前後にしたいところです。
α1-MGの除去率を40%以上にすると、RLS(レストレスレッグスシンドローム、下肢のむずむず感のこと)の治療に効果的です。
- α1-MG除去率:40%以上
- α1-MG除去量:200mg
が、到達したい目標値でもあります。(これらの値だともっといいという意味)
これは体内のα1-MGのターンオーバーを促し、生体を酸化ストレスから防御することで、生命予後の改善につながるのではないかと考えられています。
しかし、体重が80kg以上の方でα1-MG除去率35%を達成することはかなり大変です。
体格を考慮した透析時間の延長などの透析条件を調節する必要があります。
β2-MGの除去率は、HDでも80~90%の除去率は可能です。
しかし、α1-MGはオンラインHDFで置換液量を維持し、物質が多く除去されてターンオーバーを促すことが、生命予後の向上につながっています。
「血流量」「置換液量」「ヘモダイアフィルタ」この3つが大事な選択です。
α1-MG除去とアルブミン漏出量
アルブミン漏出量は4gが目安と言われていますが、患者の状態によっては6gまでは大目に見てもいいと有識者は言います。
α1-MGの除去率が高すぎる(50%以上)と、同時にアルブミン漏出も懸念されます。
しかし実際、アルブミン値や筋肉量は全然低下しておらず、普通に食事が取れれば、アルブミンが5~6g抜けても問題ありません。
また、透析アミロイド症を予防するためには、多少アルブミン濃度が低くても(目安アルブミン3.2g/dl未満)、α1-MGは抜くべきです。
生命予後を向上、改善するためには不定愁訴を取り除くことが大事です。
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