現在日本における糖尿病患者は約1000万人を超え、人口の約10%に迫ろうとしています。
また透析患者さんの40%以上は糖尿病性腎症を原疾患としており、約半数が糖尿病を患っています。
糖尿病では血糖コントロールや合併症の多さから予後不良と言われれています。
糖尿病患者の透析導入
慢性腎不全患者の透析導入基準のガイドラインは、日本腎臓学会から提唱されています(下記画像)
腎不全による障害を「Ⅰ.腎機能」「Ⅱ.臨床症状」「Ⅲ.日常生活障害度」の3つに分類して評価しています。
この3つの合計点数が60点以上なら維持透析への導入適応としています。
また「Ⅱ.臨床症状」と「Ⅲ.日常生活障害度」は以下の点で高度、中等度、軽度とします。
【Ⅱ.臨床症状】
- 体液貯留(全身性浮腫・高度の低たんぱく血症・肺水腫)
- 体液異常(管理不能の電解質・酸塩基平衡異常)
- 消化管症状(悪心・嘔吐・食欲不振・下痢)
- 循環器症状(重篤な高血圧・心不全・心包炎)
- 神経症状(中枢、末梢神経障害・精神障害)
- 血液異常(高度の貧血症状・出血傾向)
- 視力障害(尿毒症性網膜症・糖尿病性網膜症)
これら1~7の項目のうち
・3項目以上のものを高度(30点)
・2項目を中等度(20点)
・1項目を軽度(10点)
とする。
【Ⅲ.日常生活障害度】
- 高度(30点):尿毒症症状のため起床できないもの
- 中等度(20点):日常生活が著しく制限されるもの
- 軽度(10点):通勤通学あるいは家庭内労働が困難な場合
ただし、年少者(10歳以下)、高齢者(65歳以上)あるいは高度な全身性血管障害を合併する場合、全身状態が著しく障害された場合などは、それぞれ10点加算する
これは、糖尿病じゃない人も糖尿病性腎不全の人もこの透析導入基準に準じます。
糖尿病患者が注意すべき2点
しかし、糖尿病性腎不全の透析導入にあたって注意すべき点が2つあります。
- 低クレアチニン血症
- 低たんぱく血症
【1.低クレアチニン血症】
糖尿病患者は栄養障害から低クレアチニン血症をきたすことが多い
【2.低たんぱく血症】
尿蛋白排泄量が多いため(ネフローゼ症候群)低たんぱく血症をきたすことが多いです。
そのため、浮腫やうっ血性心不全、肺水腫などの溢水状態を呈する患者が多いです。
つまりこの2つから、血清クレアチニンの値が8(mg/dl)未満でも、うっ血性心不全や肺水腫などの重傷合併症がある場合は、透析導入を決定することもあります。
検査と臨床経過
糖尿病は透析が必要となる「腎症5期」になるまでに段階を踏みます。
糖尿病は腎臓の病変から5つに分別されます。
- 腎症1期(腎症前期)
- 腎症2期(早期腎症期)
- 腎症3期(3A期:前期顕性腎症期、3B期:後期顕性腎症期)
- 腎症4期:腎不全期
- 腎症5期:透析療法期
【1.腎症1期(腎症前期)】
尿検査に異常が現れる前から、腎臓に病変が作られる
【2.腎症2期(早期腎症期)】
糸球体の基底膜が厚くなってきて、そこから小さいたんぱくであるアルブミンが微量に漏れるようになってくる
【3.腎症3期(3A期:前期顕性腎症期、3B期:後期顕性腎症期)】
さらに進行して病変が広がり、糸球体に結節なども作られるようになり、蛋白尿が明らかになる(3A期)。
そして腎機能の低下が認められる(3B期)
【4.腎症4期:腎不全期】
さらに腎機能が悪化する
【5.腎症5期:透析療法期】
透析療法が必要になる
また、血尿はほぼ無く、あってもごくわずかです。
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