はじめに
透析患者では腎不全の影響で老廃物が血中に溜まってしまいます。
この老廃物の一種でβ2-MG(ベータツーエムジー)があります。
このβ2-MGは腎臓の糸球体を容易に通過するので、透析患者では濾過されず、血中に溜まってしまいます。
そしてβ2-MGが体内に長期間蓄積してしまうと、透析アミロイドーシスになってしまいます。
今回はβ2-MGをどうやって下げたらいいのか、方法を5つ紹介します。
β2-MGを下げる5つの方法
- 除去効率を上げる
- オンラインHDFの施行
- リクセルの使用
- 生体適合性の良い透析膜の使用
- 透析液の清浄化
1、2、3はβ2-MGの除去を促進する方法です。
4、5はβ2-MGの産生を抑制する方法です。
なので捉え方的には、1、2、3は対症療法で、4、5は根本解決って感じです。
では1つずつ解説していきます。
1.除去効率を上げる
β2の除去効率(透析効率)は以下のように上げます。
- QBのup
- 膜面積のup
- 透析時間の延長
これらによって、老廃物の除去を促進することができます。
ハイパフォーマンス膜の普及により、現在のダイアライザでは拡散でβ2が抜けます。
注意点としては以下のような確認事項を事前にしましょう。
- QBのup → シャント血流量は大丈夫か?
- 膜面積のup → 血圧は大丈夫か?
- 透析時間の延長 → 拘束時間が増えることによる、患者さんの精神的負担は大丈夫か?
これらを事前に評価して施行するようにしましょう。
【効率はコチラの記事で解説しています】
2.オンラインHDFの施行
β2は先述しましたが拡散でもよく抜けます。
しかしオンラインHDFで濾過をかけることによって、更に除去率をUPすることができます。
3.リクセルの使用
リクセルというのは、カネカメディックス株式会社が販売しているβ2-MG吸着カラムです。
このカラムを回路に装着することによって、β2を吸着除去してくれます。
リクセルではこういった報告もあります。
- リクセル + HDではるかに吸着量が優れていた
→S-25を用いたβ2-MGの平均除去率は71%との報告もある
- リクセル + HDFでより除去率UP
→リクセルとHDFの併用で痛みの改善が著名であった
ただ、誰にでも使用できるわけではなく、以下の条件を全て満たしている必要があります。
a) 手術または生検により、β2-MGによるアミロイド沈着が確認されている
b) 透析歴が10年以上であり、以前に手根管開放術を受けている
c) 画像診断により骨嚢胞像が認められる
このa~cの条件を全て満たすことによって、保険が適応されます。
【リクセルはコチラの記事で解説しています】
4.生体適合性の良い透析膜の使用
生体適合性の良い膜を使用することによって、β2の産生を抑制することができます。
β2はHLA抗原という免疫機構を司る所に存在しています。
つまり免疫反応が起こってしまい、免疫系が活性化されると、HLA抗原が刺激され、血中に動員されます。
すると、HLA抗原にくっついているβ2も血中に動員されるので、数値が上がってしまいます。
透析膜は生体適合性が悪いと、炎症サイトカインであるIL-6やTNF-αなどの物質が産生されます。
こういったように生体適合性が悪いと、免疫が刺激されてβ2-MGも数値が上がります。
生体適合性を見極める簡単な方法は残血です。
透析後の残血がある場合は、ダイアライザの材質変更や、透析条件の変更等をすることが大事です。
5.透析液の清浄化
先述しましたが、免疫系が活性・刺激されると、β2が増加します。
透析液も水質が汚いと体内で免疫系が活性するので、β2が上昇してしまいます。
昔は透析液が汚いことによるβ2の上昇は結構あったみたいです。
現在は、透析液水質基準が明確になっていて、水質確保加算もあるので、透析液の清浄化に努めている施設がほとんどです。
β2-MGの産生の根本解決
どれだけβ2の除去効率を上げても、産生が亢進されていると、β2はいつまでたっても高値をとります。
なので一番大切なのは産生を抑制する根本解決です。
しかしこれが難しいことも重々承知です。
透析患者は透析療法による慢性微炎症状態にあります。
また、慢性的に炎症が続くもので肝炎があります。
正直慢性炎症の原因疾患を有する場合、β2-MGが高値なのはしょうがないというのが本音です。
なので根本解決も難しいです。
しかし、一番大事なのは根本解決というのだけは知っておかなければいけません。
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